研究課題/領域番号 |
17KT0038
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 準治 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00594087)
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研究分担者 |
高瀬 慎介 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00748808)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / 積層造形 / 熱伝導 / マルチマテリアル |
研究実績の概要 |
R1年度については, 積層造形を念頭においた熱伝導問題のトポロジー最適設計法の確立を目指した.これまでは,定常熱伝導問題の最適設計しか扱えなかったが,非定常熱伝導問題へ拡張し,工学的に許容できる範囲の感度の精度を保つことができるようになった.また,ここでは2次元問題のマクロ構造単独の最適設計を対象としたが3次元問題への拡張も可能である. 一方で,次世代の積層造形技術として,異種材料を組み合わせた造形,すなわちマルチマテリアル化によって力学的性能の向上を図る設計が注目されているが,それぞれの材料の熱膨張率が異なるため,異種材料の界面で熱ひずみに伴う応力集中が発生し,造形中ひいては造形後の部品に亀裂を発生させるなど,品質および力学的性能に大きく影響することになる.そのため,これを軽減するためのマルチマテリアルトポロジー最適設計法の開発を先駆けて実施し,すでに理論の構築に成功させた. さらに,造形後の部品の動的な力学性能を制御するための最適設計法の構築を行い,粘性減衰を取り入れたマルチマテリアルトポロジー最適設計法を開発した.これらの研究成果はすでに国内外で発表している.ここでは,最初に質量および剛性,粘性に関する項すべてに設計変数を埋め込み,力学挙動を制御できるモデルを構築した上で、要素単位のレイリー減衰を最適化計算用に工夫してモデル化し,調和外力に対してマクロな構造が想定する時間幅において最も変形が小さくなるような最適化問題を定式化した.これらの研究成果はすでに国内外で発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算コスト等の制限により,初年度に造形時の複雑なマルチフィジックス現象の再現に関する大規模計算の実装は,断念せざるを得なかったが,一方で非定常熱伝導を考慮したトポロジー最適設計法とマルチマテリアルトポロジー最適設計法の開発など,学術的に高度な問題に対する設計法を比較的早い段階で構築できたということから,本研究課題は比較的順調に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,開発した非定常熱伝導問題のトポロジー最適設計法の拡張として,熱伝導問題と力学問題の両方を考慮したマルチフィジックス現象に対するトポロジー最適設計法の確立を目指す.具体的には,マルチマテリアル化された構造が熱膨張した際に,材料界面に生じる応力集中を低減し,さらに,それぞれの材料の強度を超過しないような究極の材料配置を求めるためのマルチマテリアルトポロジー最適設計法を構築する. また,より現実的な挙動を再現するために,幾何学的非線形性を考慮し,有限変形解析の枠組みで最適化することを考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
R1年度は、大規模計算を実施せず、非定常熱伝導問題トポロジー最適化を解くための感度解析の理論構築に専念することとした。これまでに開発してきた手法は、熱流束が大きい箇所において若干の齟齬が生じることがあった。この点を修復することに成功した。今年度は、最終段階として大規模計算を実施するために、それに耐えうるクラスターマシンを導入し、これまでに構築した理論を検証すると同時に性能を見極める。
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