マクロファージは極めて多彩な機能を発揮する。生活習慣病と癌の基盤病態である慢性炎症では、その開始から遷延化、組織機能障害と組織リモデリングまで、すべてのプロセスで主要なエフェクター細胞として働く。一方でマクロファージは炎症の収束や組織修復にも働き、また常に組織恒常性を維持する機能も持つ。そのため、老化や病態に伴うマクロファージの機能変化は、組織恒常性やストレスへの応答を変調させ、組織機能障害をもたらすことが想定される。本研究で は、マクロファージの内因的な機序(発生学的由来、老化による変化)と外因的な要因との複雑な交互作用によって決まるマクロファージ機能の多様性の制御機序を明らかにすることを目的とする。マクロファージの由来は加齢や病態によって変動し、また、微小環境も変わる。特にマクロファージは、本質的にその置かれる環境の変化にダイナミックに応答して多彩な役割を果たすことから、時空間と病態といった多様な軸から解析することが、その作動原理(制御プログラム)を解明するために必須である。この点から本研究では、時間(年齢)、空間(複数組織)、組織の状態(定常状態と疾患)を横断的に解析する。ストレス下(心不全モデル、加齢マウス、心筋梗塞モデル)でのエピゲノム解析を進めた。また心筋細胞と線維芽細胞、癌細胞とマクロファージの共培養によるマクロファージエピゲノムへの作用についてもさらに解析を進めた。シングルセル解析によるサブポピュレーションのストレスによるトランスクリプトーム変化とを合わせ、組織ならびに環境によるマクロファージ変化についての検討を進めた。
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