これまでの本研究において、DNB理論を用いて、生体の遺伝子レベルでのゆらぎを捉える事で、メタボリックシンドロームの未病の存在を科学的に証明した。しかしながら、この基礎研究の成果を臨床の場に実装するには、DNB理論によって検出される生体のゆらぎ情報を、非侵襲的に計測可能な技術の開発が必須である。本年度は、血液細胞の活性化過程における、ラマンスペクトルのゆらぎを捉えることで、医療応用可能な未病の検出技術を構築することを目標とした。具体的には、すでに公表済みのT細胞活性化過程におけるラマンスペクトルを利用して、DNB解析を行った。通常、T細胞活性化は、抗CD3と抗CD28抗体の刺激後24時間以上を有する。一方で、DNB解析では、活性化誘導後わずか2 h~6 hでもっともラマンスペクトルのゆらぎが大きくなることが観察された。従って、この時間帯が、T細胞の活性化の遷移状態であることが推察された。今後は、これらラマン計測とDNB解析の融合技術を応用することで、血液疾患の未病状態(=遷移状態)の検出を行う予定である。
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