XLMRは、tRNA修飾異常が原因ではないかと推察されているが、その分子機構は不明であった。近年、その原因遺伝子として、Ftsj1が同定された。我々は、これまでの研究によりFtsj1は、Phe、Trpなど5つのアミノ酸に対応するtRNAの32および34位の2’-O-メチル化修飾酵素であることを同定した。本研究では、Ftsj1の全身および神経特異的欠損マウス(KOマウス)を作製し、同マウスの2’-O-メチル化修飾について検討した。まず平成29年度に開発した尿中tRNA修飾解析技術を用いて、Ftsj1 KOマウスと野生型マウスの尿中の2’-O-メチル化シトシンについて解析したところ、Ftsj1欠損マウスでは尿中の2’-O-メチル化シトシン量が野生型マウスの約22%であった。次にXLMR患者ならびに健常人の尿標本を用いて、尿中の2’-O-メチル化シトシン量と未修飾シトシン量を比較検討した。XLMR患者では同修飾シトシンの量が、健常人と比較して約56%低下していた。以上のことから尿中tRNA修飾解析法が、XLMR診断解析方法として有用であることが示された。 また、昨年度の継続研究として2型糖尿病患者血球成分からRNAを精製し、同RNA中のチオメチル化アデノシン量について我々が開発したtRNA修飾解析技術で測定した。Cdkal1遺伝子の2型糖尿病と関連のある一塩基多型でリスクアレル保有者と非リスクアレル保有者に分類し、チオメチル化アデノシン量について比較した。その結果、リスクアレル群では、チオメチル化アデノシン量が有意に減少していた。
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