研究課題
今年度は、オラリティに関するこれまでの我々の考察をまとめると共に、対話の中で発話のタイミングによって「面白さ」がいかに活き、また削がれるかを調べるためのツールの検討と、実験データについて検討をおこなった。ツールについて。音声動画合成ツールを完成させているが、これを実験に用いる上での問題点を洗い出すことができた。同時に、動画を切り離し、音声のみの合成ツールが、当面の実験に非常に適していることもわかった。実験データについて。「面白い」台本の作成を通じて、「面白い話」の型の分類を開始した。「面白さ」といっても、型の違いによって、活きるタイミングが異なるからである。それとは別に、「一般成人の日本語母語話者」「プロのお笑い芸人」「児童」の3タイプの自然会話収録をおこなった。これらについて、「面白い」箇所を切り出して実験刺激として利用できるかどうかを検討した結果、「児童」の会話に関しては、さらに特別の検討を要することがわかった。また、収録の遅れている日本語学習者についても、今後の収録計画を立てた。さらに年末の合宿でのディスカッションを通じてわかったのは、以上の実験を通じて検証すべき具体的な仮説を構築するために、文法論的~語用論的な観点から、コミュニケーション行動とタイミング、さらに状況の関係について、考究する必要性があるということである。発話の間とは、コミュニケーション行動と状況の重なり合うところであり、これをどのようにとらえるかは、コミュニケーション行動と状況の見方、ひいてはコミュニケーションの根本的な考え方に影響する。
2: おおむね順調に進展している
今年度の初動は7月下旬であったが、それでも日本語学習者の対話データ収録が遅れている点を除けば、会話収録、実験手法の検討、実験のための台本そして音声刺激の作成と実験など、順調に計画を進めることができたので、(2)と判断している。
今後は、今年度に引き続き対話収録をおこない、それと同時に、実験によって検証すべき対象としての、発話の間に関する仮説の構築精錬を計画している。遅れている日本語学習者の対話収録についても、早急に収録を実施する予定である。
今年度出版した論文集が質量ともに予想を上回るものになったため、そのディスカッションを中心とした大規模な会議を次年度に開催予定を立て、そのための費用を次年度に回した。
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David G. Hebert (ed.), International Perspectives on Translation, Education and Innovation in Japanese and Korean Societies, Cham: Springer International Publishing.
巻: なし ページ: 133-147
http://www.speech-data.jp/kaken_ma/