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2018 年度 実施状況報告書

裁判員裁判の評議デザイン-評議におけるストーリーの構築過程と法実践手法の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0064
研究機関関西学院大学

研究代表者

森本 郁代  関西学院大学, 法学部, 教授 (40434881)

研究分担者 北村 隆憲  東海大学, 法学部, 教授 (00234279)
小宮 友根  東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
三島 聡  大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (60281268) [辞退]
佐藤 達哉  立命館大学, 総合心理学部, 教授 (90215806)
研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2020-03-31
キーワード裁判員裁判 / 評議 / コミュニケーション・デザイン
研究実績の概要

本研究課題の目的は、裁判員裁判において裁判官と裁判員が事実認定および量刑について議論する評議のプロセスを、裁判官と裁判員のコミュニケーションならびに法の実践という二つの観点から検討し、研究代表者らがこれまで提案してきた評議のコミュニケーション・デザイン(以下、評議デザイン)の一層の洗練を図ることである。具体的には、公判審理が評議のプロセスに与える影響に焦点を当て、検察側・弁護側の対立するストーリーを裁判官と裁判員がどのように理解し、「常識」的推論を用いて両者が合理的だと見なすストーリーを再構築していくのかを明らかにし、その知見を踏まえて、法的にも妥当な評議デザインの再検討と提案を行う。平成30年度は、平成29年度に引き続き、研究代表者らがすでに持っている既存の模擬裁判・評議の分析を継続するとともに、東京と大阪のそれぞれの弁護士会が主催した模擬裁判・評議の傍聴を行い、評議の進め方についての問題点の洗い出しを行った。今年度は特に、東京第三弁護士会の好意で模擬裁判・評議データを借り受け、裁判官と裁判員が量刑を判断する際などに用いている常識的な推論に焦点を当てて分析を行った。その結果、裁判官が、類似事案の中に位置づけて量刑の軽重を判断しているのに対し、裁判員は、刑期という時間を判断するのに、日常的な経験や推論を用いて行っていることが明らかになった。さらに、評議の進行が、各論点での議論を積み重ねて最終的な合意に至る「プロセス共有型」というよりは、各自が自身の意見を表明したあと、それらの意見に基づいて議論を深めることはあまりせず、最終的に多数決で量刑を決定する「結論重視型」である傾向がみられることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

海外から研究者を招聘しワークショップを開催することを計画したが、当該研究者が急病のため直前で来日をキャンセルしたため、ワークショップを開催することができなかった。なお、その代替措置として、招聘予定だった研究者に、スカイプを使って現地から遠隔で講演をしてもらうとともに、国内の参加者による研究会を開催した。また、弁護士会が模擬裁判・評議のデータ利用に慎重な姿勢に転じたため、新しいデータの入手が困難になった。

今後の研究の推進方策

評議の進行においてさまざまな工夫を行っている裁判官の協力を得て、自前で模擬裁判・評議を実施し分析を行う。さらに、裁判官とともに研究会を開催し、お互いの知見を共有して、裁判員裁判の現場に役立つ評議デザインの策定を図る。

次年度使用額が生じた理由

東京第三弁護士会から模擬裁判・評議のデータを借り受けることができたため、自前での模擬裁判・評議の実施を行わなかった。また、海外から研究者を招聘してワークショップを開催する予定であったが、当該研究者が急病のため直前で来日をキャンセルしたため、それに充てる予定であった経費が未使用となった。来年度は裁判官の協力を得て自前で模擬裁判・評議を行う予定である。また、研究者の健康が回復すれば、中止したワークショップの開催も行う。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 質的データの可視化支援ツール「NARREX」の開発―KJ法経由のTEMとそれをサポートする方法について2019

    • 著者名/発表者名
      斎藤進也・安田裕子・隅本雅友・菅井育子・サトウタツヤ
    • 雑誌名

      立命館人間科学研究

      巻: 38 ページ: 111-120

  • [雑誌論文] 職務質問およびその付随行為における『任意』――日常用語的理解は誤りなのか2019

    • 著者名/発表者名
      三島聡
    • 雑誌名

      法学雑誌

      巻: 64 ページ: 883-909

  • [雑誌論文] 裁判官のアイデンティティと実践の諸形式ー評議における相互行為資源としての「後ろの位置」2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 雑誌名

      法社会学

      巻: 85 ページ: 181-208

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 調停のコミュニケーションを分析する―非難の連鎖はいかに「管理」されるか2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 雑誌名

      東海法学

      巻: 56 ページ: 47-80

  • [雑誌論文] 法律相談のコミュニケーションを分析する―全体構造組織と相互理解の技法2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 雑誌名

      東海法学

      巻: 56 ページ: 81-129

  • [雑誌論文] 取調べ録画動画の提示方法が自白の任意性判断に 及ぼす影響 -日本独自の二画面同時提示方式と撮影焦点の観点から-2018

    • 著者名/発表者名
      中田友貴・若林宏輔・サトウタツヤ
    • 雑誌名

      法と心理

      巻: 18 ページ: 70-85

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 再審請求審における証拠の明白性判断と供述心理学鑑定の意義――大崎事件第3次再審請求2018

    • 著者名/発表者名
      三島聡
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 90 ページ: 122-125

  • [学会発表] 評議において裁判員は常識的推論をどのように行うか―近時の模擬裁判の分析を中心に2018

    • 著者名/発表者名
      森本郁代、岸本健太、北村隆憲、小宮友根、三島聡、サトウタツヤ
    • 学会等名
      法と心理学会第19回大会
  • [学会発表] 評議における議論のプロセスは裁判員の意見形成にどのように関わるか―予備評決後の意見表明を中心に2018

    • 著者名/発表者名
      森本郁代、岸本健太
    • 学会等名
      法と心理学会第19回大会
  • [学会発表] 裁判員は「常識」を使ってどのように議論をするのか―実践的推論の構造2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 学会等名
      法と心理学会第19回大会
  • [学会発表] 量刑評議における時間表現と「計算」のプラクティス2018

    • 著者名/発表者名
      小宮友根
    • 学会等名
      法と心理学会第19回大会
  • [学会発表] 裁判員裁判における量刑評議の目標とその実現のための方策2018

    • 著者名/発表者名
      三島聡
    • 学会等名
      法と心理学会第19回大会
  • [学会発表] 対話型調停における調停人の技法(傾聴と助言)ー実際の会話の分析からー2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 学会等名
      日本司法書士会調停センター
  • [学会発表] 対話的法実践の質的研究―調停と評議の相互行為分析2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 学会等名
      日本法社会学会
  • [学会発表] 法律相談の相互行為分析と実践への示唆2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 学会等名
      日本法社会学会
  • [学会発表] チャールズ・グッドウィンと「法」 -「プロフェッショナル・ヴィジョン」の法社会学2018

    • 著者名/発表者名
      北村隆憲
    • 学会等名
      エスノメソドロジー・会話分析研究会
  • [学会発表] 'Ambiguous' property of 'precise' description: Restoring practice in legal interaction2018

    • 著者名/発表者名
      Komiya, Tomone
    • 学会等名
      5th International Conference of Conversation Analysis
    • 国際学会
  • [図書] 文化心理学2019

    • 著者名/発表者名
      木戸彩恵、サトウタツヤ
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      ちとせプレス
  • [図書] 聞き手行動のコミュニケーション学2018

    • 著者名/発表者名
      村田和代、難波彩子、植野貴志子、山口征考、岡本雅史、増田将伸、横森大輔、森本郁代、片岡邦好、井出里咲子、ブッシュネル・ケード、釜田友里江、首藤佐智子
    • 総ページ数
      324
    • 出版者
      ひつじ書房

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公開日: 2019-12-27  

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