研究課題
平成30年度は,前年度から企画していた様々なイベントや学会発表を実施し,書籍出版に向けた議論を進めた.具体的に年度の前半は,スウェーデン初のろうの教授であり,盲ろう者の触手話研究の第一人者であるProf.Johanna Mesch(ストックホルム大学)を日本に招聘し,関西(国立民族博物館,5/13)・関東(国立情報学研究所,5/14)での講演会を実施した.この講演会には研究者のみならず,盲ろう者,盲ろう通訳介助者が多数参加し,熱心に議論が交わされた.また,翌日(5/14)には東京盲ろう者友の会にProf. Meschをお連れし,盲ろう者団体のキーパーソンらとの会談の場を持った.年度の後半は,前年度同様海外共同研究者のモナシュ大学Dr. Shimako Iwasakiを2か月弱研究室に受け入れ,国際会議へのパネルセッション投稿や,国際ジャーナルへの特集記事企画等について議論を交わした.また,データ収録(指点字対話,指点字通訳インタビュー場面),データ分析,データセッション,関連団体(東京盲ろう者友の会,日本盲ろう者協会)への訪問等を実施し,国際共同研究連携を強固にした.中でも指点字通訳インタビュー場面はインタビュイーを分担者の福島智教授を対象とし,当事者としてのオラリティの問題について議論を交わした.また,国際高等セミナーハウス(軽井沢,11/22-24)での合宿を実施し,データセッション,出版企画について議論を交わした.また,ディスカッサントとして京都大学名誉教授菅原和孝先生をお招きした.本合宿では,本科研費メンバーのみならず,若手研究者による発表も企画し,幅広いディスカッションが繰り広げられた.さらに,令和元年6月に香港で開催される国際語用論学会のパネルセッションにDr. Shimako Iwasakiと共同で企画を投稿し,採択されるに至った.
1: 当初の計画以上に進展している
モナシュ大学との連携,ストックホルム大学との連携が強固となり,日本の手話,触手話,指点字によるコミュニケーションを国外の研究者に紹介する場面が増えて来た.そのことにより,国際会議等で議論すべき学術的問題が整理され,有意義な研究成果が上がりつつある,また,分担者に当事者が2名入ることにより,一般書籍等に研究成果が掲載され,国民へのアクセスも可能になりつつある.さらに,国際語用論学会では,我々のパネルセッションにデンマークやフィンランドの研究者が参加する予定で,さらなる連携が見込まれる.以上の理由から,当初の計画以上に進展していると考えている.
今後の研究の推進方策としては,令和元年度は国際語用論学会での発表を予定しており,11月に日本国内で中規模の国際ワークショップを計画している.それらの活動を通じて国際的な立ち位置を明確にし,国際ジャーナルへの論文投稿や国際ジャーナルでの特集 企画を進める.最終年度となる令和元年度は本研究課題の成果を集めた論文集を出版し,研究成果の意義を確認する予定である.そのため,出版社の選定や交渉 を開始し,研究期間内での出版の目処をつけることを予定している.その他に,これまで複数回実施したような一般向けの講演会等を積極的に企画し,学術界のみならず,日本国民全体への関心に繋げる工夫をこらす.
次年度使用額が生じた理由としては,(1) 対面で実施すると想定されていたミーティングがスカイプ等を利用することになった,2泊3日の研究合宿を研究代表者の所属する組織の施設で実施したことにより,旅費が当初の計画ほど必要にならなかった,(2) 手話通訳を要するミーティングがそれほど多くなかったため,謝金が当初の計画ほど必要にならなかったことが挙げられる.最終年度は出版企画を練ることになっているため,これまで以上に対面で議論する場を持ち,旅費や謝金の使用が見込まれる.
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 7件、 招待講演 5件) 図書 (5件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (2件)
群馬大学教育学部紀要 人文・社会科学編
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臨床心理学会誌
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http://research.nii.ac.jp/~bono/ja/index.html