研究課題/領域番号 |
17KT0070
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山根 健治 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60240066)
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研究分担者 |
飯郷 雅之 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10232109)
池口 厚男 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10222415)
前田 勇 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10252701)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | アクアポニックス / 野菜 / 水産養殖 / 持続的栽培 / 熱収支 |
研究実績の概要 |
アクアポニックスは作物の水耕栽培と養殖を同時に行うシステムであり、持続的な農業として注目されている。本研究では、20℃以上に調節した温室内でリーフレタスを水槽との養液循環させたアクアポニックスで栽培し、魚の有無による生育の差異を調査した。レタス品種‘グリーンスパン’とナマズを供試した。アクアポニックスの養液には、NとP以外のKCl,CaCl2およびMgSO4をそれぞれ2,1および0.5 me/L加えた。20℃で発芽させたレタス苗を1/1000 の液肥(N:P:K = 6:10:5) を含むトレイで湛液栽培し、1週間毎に養液を交換した。播種30日後に一部のレタス植物体を魚有りのアクアポニックス(AF)および魚無しのアクアポニックス(AC)に移植し、湛液栽培のままのものを対照(C)とした。植物を4週間栽培し、生育と品質、養液の性質・成分を1週間毎に調査した。4週間後の生体重および乾物重はACよりもAFおよびCにおいて有意に高かった。SPAD値は Cで31.8、AFで23.6 、AC で8.4 であった。最大根長は、AF、 AC 、Cの順に短くなった。 AF の養液中のNおよび P濃度はACよりも高く推移したが、Cよりも低かった。魚の餌が代謝され植物の養分として利用されたが、Cに比べると十分ではなかったことが示唆された。 焼却炉の未利用廃熱を活用した温室および水産養殖システムへの熱供給システムを用いて、温室におけるトマト、イチゴの栽培,およびトラフグの養殖を開始した。熱収支に関する基礎データ採取を行うとともに、トマト、イチゴの収量とトラフグの発育状況を継続的に調べている。また,水産養殖産物の安全を評価するための指標として細菌叢を用いるため、ナマズおよびアユの体表由来のDNAをテンプレートとした16S rRNA V3-V4領域のPCRアンプリコンの次世代シーケンス解析法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクアポニックスの実用レベルでの試作機は作成できなかったが、予備的なデータを取得できた。また、廃熱を利用した園芸生産と水産養殖の実地試験も進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
アクアポニックスシステムについて台数を増やして,実験の規模を拡大するとともに、研究結果を踏まえてフィードバックを行い、実用型の改良機を作成して試験に用いる。試験区を拡大して、養液中のN,P,K,Ca,Mgなどをモニタリングしながら、植物の生育および品質調査を行い、植物の生育に十分な魚の密度を調査する。 対象魚種としてタナゴおよびメダカを加える。ナマズやタナゴなど自生する魚類の生育、さらに微生物に対する影響についても調査する。在来集団のメダカを高密度で養殖し,アクアポニックスへの適応を調査し、希少集団と生物多様性保持のためにアクアポニックシステムが適用可能であることを実証する。 アクアポニックシステムの応用として、熱帯魚の水槽、水草と花き栽培を複合させ、家庭や公共のスペースに おける環境美化と利用者のQOLの向上へとつなげる可能性を検討する。 焼却炉の廃熱を利用した温室およびアクアポニクス用の温室において、エネルギー利用効率の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度はアクアポニックスシステムの試作機の作成にとどまり、水槽等を設置することができなかったため次年度使用が生じた。 30年度はアクアポニックスシステムの個数と規模を拡大するために残額を使用する。
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