研究課題/領域番号 |
17KT0080
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅沼 拓夫 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 教授 (70292290)
|
研究分担者 |
安本 慶一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40273396)
加藤 由花 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (70345429)
|
研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
|
キーワード | IoT / ロボット / 信頼関係 / プライバシー |
研究実績の概要 |
研究項目(A)プライバシ情報の取得・可視化: 主に(A2)プライバシ程度の点数化,(A3)プライバシ情報の可視化を実施した.具体的には,得られたプライバシ情報の開示度スコアリングを行う手法を考案した.また,これらの結果に基づき,キーワードの出現頻度の可視化法やレーダーチャート等を参考に,動的に複数のプライバシタイプとその程度が可視化できる方法を考案した. 研究項目(B)プライバシ適正化のためのインタラクション:(B1)プライバシ適正化モデル,(B2)プライバシ適正化インタラクション,(B3)適正化のインタフェースを実施した.具体的には,機械に把握されているプライバシ把握情報を適正化するインタラクション法を考案した.その際,ユーザをプロファイリングし,タイプごとに適正化モデルを構築した.次に,構築したモデルをもとに,どのようなインタラクションを行うことで効率良くプライバシ情報の適正化(公開範囲の調整)が可能かを検討し,インタラクションルールとして作成した.さらに,抽出したインタラクションルールをもとに,インタラクションのためのインタフェースを作成した. 研究項目(C)コミュニケーションロボットへの応用:(C1)コミュニケーションロボットの設計,(C2)インタフェースの組み込み,(C3)アプリケーションサービスの開発を実施した.具体的には,プライバシ情報の取得と可視化,およびプライバシ適正化のためのインタラクションを対話的に行うためのロボット機能を設計した.さらに,環境側に設置された多種多様なIoT機器とロボットを組み合わせた,アプリケーションサービスを設計した.研究項目(D)実験と評価:(D1)実験環境の構築,(D2)評価シナリオの設計,(D3)スマートホームでの予備実験を実施し,研究成果の評価・検証のための準備を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体的に概ね順調に,当初計画通り研究開発が進捗している. 特に,(A2)プライバシ程度の点数化,(B1)プライバシ適正化モデル,および(B2)プライバシ適正化インタラクションにおいては,インターネットの各種サービスを利用する際の個人情報の開示度設定に際し,ユーザが持つ開示度の好みだけでなく当該ユーザの情報リテラシも考慮した適切な設定を推薦する手法について検討し,シミュレーション実験によりその有効性を検証した.この研究成果は,既に国内論文誌に投稿済みであり,予定を上回る進捗状況である. また,本提案における人と機械の信頼関係構築のための基本的な考え方を,「利用者指向性」を特徴とした「やわらかいエッジコンピューティング(Flexible Edge Computing: FLEC」の概念としてまとめ,その論文がIEEE Network (IF:7.230)に掲載された.この論文は,2018年2月のIEEE NetworkのPopular Articlesの第5位にランキングされている. 一方で,(A1)プライバシ情報のセンシング・抽出においては,概念設計,詳細設計の実施に留まり,予定していた実装までは至っていない. 以上から,部分的には計画以上に進展しており,全体としては概ね順調に研究が進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,研究項目(A)については,サブ項目(A3)プライバシ情報の可視化に取り組み完成させる.本研究では,人が機械とインタラクションする際に,どれだけのプライバシ漏洩のリスクがあるのかをコミュニケーションを妨げることなく直感的・容易に把握できるようにする必要がある.また,プライバシの内容そのものが,他の人にわからないようにする配慮も必要である.これらの点を考慮したプライバシの可視化を,プライバシスコアリング技術を参考に設計・実装する. 研究項目(B)に関しては,(B1)-(B3)に取り組み,プライバシ適正化モデル,および,適正化のインタラクション,それに基づいたインタフェースを完成させる.適正化のインタラクションについては,音声により指示する方法,ジェスチャにより指示する方法,表情により指示する方法,それらの組み合わせを検討し,ユーザ評価を経て,それぞれのシチュエーションで最も適したインタラクションを発見する.また,これらのインタラクションに適したインタフェースとして,キネクトやReal-Sense等の深度カメラを用いたシステムを構築する. 研究項目(C)に関しては,(C1)のロボットの設計を終え,(C2)ロボットへのインタフェースの組み込み,(C3)アプリケーションソフトウェアの設計と実装に着手する.アプリケーションとしては,家庭において生活支援を行うロボットを想定する.ロボットが入手したプライバシ情報のうち,家族内で共有可能,友人や近所の住人と共有可能,誰にでも共有可能といった公開可能範囲を,提案するインタフェースによって,容易かつ直感的に適正化可能かどうかを評価できるようにすることを目指す. 研究項目(D)に関しては,前年度から継続して,研究成果の評価・検証のための準備を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた国際会議での研究発表を,研究推進の戦略上,今年度は実施せず,来年度に行うこととした.これに伴い,今年度予算で計上していた,当該国際会議発表のための旅費分を繰越し,次年度に使用することとした.
|