研究課題
工学的研究では、高機能暗号の研究において、稼働後に安全性を調節可能な柔軟性を持つプロトコルを開発した。技術的には秘密分散を利用して厳密な安全性証明を実現させ、運用面ではブロックチェーンによって将来的に実装コストを下げられるような工夫をした。前年度まで重きを置いていたプライバシー要件に関する柔軟性とともに、安全性要件に関する柔軟性も実現することによって、継続的にブロックチェーンを利用する場合のトラスト基盤としてのインパクトを強めることができる。この2021年度の主要な成果は、国際会議で学生論文賞を受賞する評価を得た。経済学的な研究では、「ブロックチェーンに追加する記録(暗号通貨の送金情報など)が正しいことを信頼できるか(正しいことを誰かが検証した証拠があるか)定かでない」という問題を、2019年度までに行動経済学的に分析し抽出していた。この問題を本研究の工学的アプローチ(暗号技術)によって解決する手法についても、アイデアは、2019年度までに考案し国際会議で提案していた。2021年度は、実際のブロックチェーンのコンセンサスプロトコルに修正を加え提案手法(検証証明技術)を異なる立場のノードレベルで実装し、2020年度よりも実際的な環境でパフォーマンスデータを取得した。ただし、国際試験ネットワーク環境を活用した技術評価は、新型コロナウィルスの影響でインシデントレスポンス体制などの管理体制を十分確保できない状況が続いたため断念し、ノードレベルのパフォーマンス評価結果をシステムレベルの波及効果推定に活用する理論研究で代替することとした。しかし、参照するパラメータ取得のために最低限の台帳ネットワーク環境が必要であることが新たに判明し、その実験実施条件を2022年度にはクリアできる見込みであることから、研究期間を1年延長することとした。
3: やや遅れている
要素技術単独の研究では、順調に成果が出た。ただし、トラスト基盤における波及効果などのシステム的な観点でもっとも重要な検証証明技術に関して、国際試験ネットワーク環境を活用した技術評価を新型コロナウィルスの影響で断念し、ノードレベルのパフォーマンス評価結果をシステムレベルの波及効果推定に活用する理論研究で代替することとしていた(前年度末の状況)。しかし、その理論で参照するパラメータ取得のために最低限の台帳ネットワーク実験環境が必要であることが新たに判明し、その実験実施条件を新型コロナウィルスの影響で2021年度にはクリアできなかった(2022年度にはクリアできる見込みであることから、研究期間を1年延長することとした)。以上の理由により、総合的には、やや遅れている状況である。
これまで順調に成果が出ている要素技術に関しては、完成度を高めて、査読付き論文としての発表を進める。さらに、ノードレベルのパフォーマンス評価結果をシステムレベルの波及効果推定に活用する理論研究を完成させ、基礎実験データを参照した定量的な考察も含めて、プロジェクト全体をとりまとめる。
国際試験ネットワーク環境を活用した技術評価を新型コロナウィルスの影響で断念し、関連する旅費支出やシステムメインテナンス費用等への支出が滞ったため、次年度使用額が生じた。2022年度には、必要な研究実施環境が整う見込みであるため、その実施費用および外部発表に係る費用等に充てて使用を進める計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Lecture Notes in Computer Science
巻: 12835 ページ: 77-96
10.1007/978-3-030-85987-9_5
巻: 12809 ページ: 378-396
10.1007/978-3-030-81645-2_22