工学的研究では、高機能暗号の研究において、稼働後に安全性を調節可能な柔軟性を持つプロトコルの完成度を高めた。技術的には、オブファスケーションという考え方を応用し、秘密開示を段階的に実施可能とした。併せて、ゼロ知識証明技術も適用したブロックチェーン系における匿名性の理論モデルを完成させ、当該分野の国際専門誌に採録される成果としてとりまとめた。経済学的研究の遅延を理由として研究期間を延長していたが、延長期間中にこのように工学的研究も発展させたため、後述するように両者の架け橋となる不正分類の研究を高いレベルで実施することができた。 経済学的な研究では、ノードレベルのパフォーマンス評価結果をシステムレベルの波及効果推定に活用する際に参照するパラメータ取得のために最低限の台帳ネットワーク環境が必要であることから、研究期間を1年延長して実験実施条件が整うのを待っていた。しかし条件が整わず、結局、国際会議のチュートリアルを活用して実験の代替となる調査を行い、波及効果を踏まえた不正分類の研究を行うことが適切であることがわかった。これは、ノードレベルのパフォーマンス評価を踏まえて電子署名検証の有無を制御し、その結果得られる省電力波及効果等を算定する際に、制御方針通りにシステムが動作する保証はスマートコントラクトの安全性に依存するからである。最終的に、この不正分類の研究成果をとりまとめ、当該分野でメジャーな国際会議で発表することとした。ただし、通常は2月開催のその会議が2023年5月に延期されたため、研究期間をさらに延長して対応した。当該発表は成功し、後続のプロジェクトで会議後にedited bookに掲載される選奨論文につながった。また、ノードレベルのパフォーマンス評価に関しては、提案技術の導入による副作用が無視できることの検証のみ実施することができ、学会発表論文にまとめた。
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