研究課題/領域番号 |
17KT0087
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
若松 邦弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90302835)
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研究分担者 |
佐久間 孝正 東京通信大学, 人間福祉学部, 教授 (80004117)
工藤 正子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (80447458)
浜井 祐三子 北海道大学, 大学院メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (90313171)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | 多民族統合施策 |
研究実績の概要 |
本年度は3年計画の中間年であり、前年度の作業から得られた推論について、当初の計画通り、モノグラフや聞き取り等による個別事象の知見をもとに解釈の導出を試みた。作業は分析対象の性格に沿って4パートに分けて実施し、年度後半(12月)に外部の専門者を招いた研究会を実施し、内外の視点から検証を行った。各作業の状況は以下である。 ①【地域社会】パキスタン系が経験している包摂や排除の状況とそれに対する認識、ならびにそれらのジェンダー、世代および階層による違いを明らかにすべく、パキスタン系女性や関係団体への聞き取り、関連資料の分析を実施した。 ②【公教育】パキスタン系とバングラデシュ系を例に、初等・中等学校における移民の言語・文化、宗教の教授について、自治体・学校の姿勢や認識、また生徒や保護者の意識を明らかにすべく、関係資料の分析を行った。 ③【歴史展開】コミュニティ関係についての関心と施策の展開についてイギリスでの論点をとらえるべく、従来の議論の流れを明らかにする目的で、民族・人種関係に関する公文書ならびに報道資料の分析を行った。 ④【政治社会環境】「多文化主義」や「統合」への関心の拡大、イスラムに対する世論の変化、排外主義勢力の台頭といった近年の環境変化を踏まえながら、イギリスでのコミュニティ関係施策の変化を明らかにすべく、施策とイスラム系住民を取り巻く環境の変化に関する行政資料と政策資料の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、初年度に所属先機関の都合により研究協力者であった研究者1名を研究分担者に追加した。その上で、当初の計画通り、関連資料(公文書、報道資料など)に加え、聞き取りやモノグラフ、政策資料など対象ごとにミクロデータの収集と分析を行い、予定に沿った形の成果が得られた。その過程で、前年に引き続き、現地での資料収集もバーミンガム、レスター、ロンドンを中心に行った。今年度までのところ研究自体の進捗に遅れや問題はなく、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
4パートに分担し実施してきた過年度の作業を踏まえ、イギリスのイスラム系住民の意識と施策との連関について総合的に考察を行い、イスラム系を取り巻く「疎外」の具体的状況、そして「統合」に向けたコミュニティ関係モデルの課題を明らかにする。 とくに2010年代後半に入ってからのイギリス(ならびにヨーロッパ)での排斥主義の急進化は、ユダヤ系や東欧系などヨーロッパ系マイノリティに対する排斥があらためて表立って強まるという歴史的変化の局面に入るものとなってきた。状況はイスラム系に対する影響を無視できない事態となっており、それを踏まえて直近の変化を視野に入れる。 分析の進展状況に沿って、現地での資料収集を行う。また、本研究を踏まえて、次年度以降に予定する出版計画の概要を具体的に固める。
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次年度使用額が生じた理由 |
資金の過半を占める現地調査は申請時より第2年度以降を中心とする計画である一方、第1年度の交付額は第2年度と同規模であったため、最終第3年度に旅費分の繰越が生じることは当初の予定どおりである。 上記のとおり、ここに来てイギリスのコミュニティ関係の変化は急であり、これを踏まえ、現地調査は本研究の期間のなかで可能な限り後ろ倒しにすべきとの判断のもと、今年度から意図的に調査の日程をずらす戦略をとっている。この観点に沿って、次年度使用分はイギリスでの現地調査の渡航費(ロンドン、バーミンガム、レスターなど)として、年度の前半において使用する(資料の購入費も含む)。
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