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2017 年度 実施状況報告書

占領の法政治学~パレスチナと西サハラにおける法の政治的機能

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0089
研究機関大阪大学

研究代表者

松野 明久  大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (90165845)

研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2020-03-31
キーワード占領 / パレスチナ / 西サハラ
研究実績の概要

本課題の初年度であった今年度は、パレスチナの研究協力者を招へいしてセミナーを行い、モロッコとその占領下にある西サハラの現地調査を行い、パレスチナの大学で行われたセミナー、日本の大学で行われたシンポジウムで発表を行った。
まず、10月にパレスチナのアル・クドゥス大学法学部の研究者で市民向け法律相談センターの所長を務めるMunir Nuseibah氏を招へいし、研究の打合せを行うとともに、本学及び他大学で占領下の法的問題についてのセミナーを行った。
次に、12月に行ったモロッコ及び西サハラの調査では、モロッコで最も大手とされる人権団体を訪問しモロッコの人権状況について資料を収集し、聞き取りを行った。また人権状況に批判的な著名な大学教授と面会して話を聞いた。そもそもモロッコにおいて表現の自由は最大の人権問題であり、西サハラ問題は3大タブーに挙げられている。それを破れば逮捕・投獄、ときには拷問も免れない。したがってモロッコ内で西サハラの状況について実態を把握するというのは相当に難しいことがわかった。西サハラでは国連派遣団(MINURSO)を訪問し、報道官から現状についてブリーフィングを受け、現地で最もよく知られた人権団体を訪問した。西サハラでは当局の監視の目が厳しく、現地住民は国連事務所を訪れることもできず、人権団体のスタッフともなれば恣意的拘禁や拷問すらされるという状況であることがわかった。
2月にはパレスチナのアル・クドゥス大学法学部で行われた占領下の強制移動に関する専門家ワークショップに招待され、発表を行った。国連パレスチナ占領地に関する特別報告者のスカイプ参加も交えた議論で、国際人権法のアプローチの重要性が確認された。3月には京都大学で行われた『パレスチナの民族浄化』刊行記念シンポジウムにおいて「ナクバのメモリサイドとパレスチナ人の真実への権利」と題する発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度の最大の課題はモロッコ及び西サハラでの調査であった。人権状況が厳しく、インタビューも容易ではない中、現地を訪問できたことは意義がある。また、パレスチナについては法学関係者たちとの議論の場が得られたことは本課題の探求にとって重要なことであると考える。

今後の研究の推進方策

本課題2年目となる本年度は、占領、自決権、人権状況に関する資料を継続して収集しながら、パレスチナに関する論考の執筆、パレスチナに関するセミナーの開催及び学会パネルの司会、西サハラ問題専門家の招へいとセミナー、イスラエル及びパレスチナでの調査を行う。
まず、パレスチナに関する論考は雑誌『現代思想』5月号のパレスチナ・イスラエル特集に「ナクバのメモリサイド:風景と記憶の政治学」と題する論考を寄稿する。これは前年度3月のシンポジウムにおける発表をもとに執筆するものである。(本報告書提出次点ですでに発行されている。)
5月にはパレスチナから別事業で招へいしているアル・クドゥス大学助教Rula Hardal氏を中心にパレスチナ問題解決オプションの検討を行うセミナーを開催する。また6月にはパレスチナからジェンダー研究者であるFadwa Allabadi氏を招へいし、日本平和学会において部会「<占領のノーマライゼーション=不可視化>と闘う-パレスチナ女性の『日常生活の政治学』」を編成し、司会を行う。占領下において女性が直面しているさまざまな問題、とくに法的地位の問題について掘り下げる。
さらに5月には、西サハラ問題研究者として国際的に知られるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学法学部教授Carlos Miguel氏を招へいし、西サハラ問題の国際法的地位、資源問題と自決権問題の関係に関する近年の動向についてのセミナーを開催する。
6月には、パレスチナに関する国内研究会で本研究の成果の中間報告を行う。8月にはイスラエル及びパレスチナを訪問し、現地調査を行う予定である。調査では占領下における法律の諸問題、とくに土地、住居に関する権利の状況及び表現の自由、集会結社の自由の状況について具体的な事例を収集する。

次年度使用額が生じた理由

2月にアル・クドゥス大学が行った占領下の法的問題に関するワークショップでの発表に、本補助金より旅費を出す予定であったが、最終的に招待発表となったため、旅費は先方大学が負担した。そのため旅費として予定していた約25万円が残るかたちとなった。しかし、次年度にイスラエル・パレスチナでの現地調査を行う予定なので、その旅費としてする計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Human Rights and International Politics over East Timor2018

    • 著者名/発表者名
      Akihisa Matsuno
    • 学会等名
      Forcible Displacement in Jerusalem: New Patterns and Legal Means of Countering
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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