本課題は令和元年度に終了する予定であったが2度の延長申請が認められ、在職最終年度にあたる令和3年度まで実施が持ち越された。残された課題は現地フィールド調査であった。しかし、結局新型コロナ感染拡大の影響でフィールド調査はできなかった。そのため、本課題が対象地域とするパレスチナと西サハラについて、それぞれオンラインによるウェビナーまたはシンポジウムを開催した。まず、申請者が参加している関西パレスチナ研究会が主催した第2回ウェビナーにアル・クドゥス大学法学部の法律扶助センター(コミュニティアクションセンター)所長ムニール・ヌセイバ助教を招き「国際法から見るエルサレム問題」のテーマで講演をしてもらった(7月17日)。次に同研究会第3回ウェビナーに同センター・国際アドボカシー担当職員ムニール・マルジーエ氏を招き「パレスチナにおける集団的懲罰と国際法」のテーマで講演をしてもらった(11月30日)。オンライン・シンポジウム「西サハラの自決権を考える47年の外国占領を問う」(2月19日)では自決権について研究されてきた3人の国際法専門家、桐山孝信大阪市大教授、山形英郎名古屋大教授、孫占坤明治学院大教授を招き、西サハラの自決権を多面的に議論した。申請者は上記すべての企画において司会を務めた。本課題との関係において、パレスチナに関する2つのウェビナーから明らかになったことは、まさに法律分野が紛争のフロントラインになっている状況である。そこには国際法とイスラエル国内法のせめぎ合いがあり、その「調整」は常に権力をもつ側(イスラエル)が主導権を握っている。西サハラに関するシンポジウムでは、国際法と現実政治の利害のせめぎ合いが焦点となった。EUの中で政治的決定を司る理事会と司法を司るEU裁判所の間でモロッコとの経済協定が西サハラを含むか否かで対立が先鋭化している。
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