研究実績の概要 |
本研究は一貫して戦争当時社会の政治的・経済的価値から戦争を論じてきた。本年度は、本研究の理論的フレームワークを応用した発展的研究に従事した。まず、戦後社会の経済的価値や復興に関心を向けることは、核抑止を考える上でも有用である。紛争当事国は核兵器を使用する際、自国社会・経済や、争われている天然資源や戦略的要地が被る被害を考慮するため、それらの財の価値や性質が各国の核兵器使用の信憑性に大きな影響を与えることになる。そして、核抑止理論の論理は、まさにこの信憑性に依存する。そこで、政治体制と戦後に得られる経済資源の性質から核抑止を論じた研究論文を完成させた。また、戦争当事者が復興した紛争後社会に見出す経済的価値の種類が戦争の戦われ方に与える影響を考察し、カンボジア内戦におけるアメリカによる爆撃や多様なアクターによる地雷埋設に関するデータを用いた実証研究論文を英文査読誌に発表した(標題"Bombing and Mining in War: Evidence from Cambodia"in Journal of Global Security Studies, Volume 5, Issue 2, April 2020, Pages 319-338)。
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