本研究は、分子やその会合体、および周期的境界条件を満たす結晶について、平衡構造(EQ)とその間の遷移構造(TS)の探索を計算化学的手法を用いて行いその性質を検討すること、及び結晶構造に関する実験を行うことを目的としている。まず初年度(平成29年度)に当初計画に沿って多コア(36コア)の計算機を導入し、量子化学計算を実行し1件の論文投稿(新規結晶作成)と4件の学会発表を行ったのに続き、平成30年度(2018年度)には研究室内でのCPU利用が逼迫してきたため多コア(22コア)の計算機を他予算(通常研究費)と合算して追加購入し、1件の論文投稿(プリズムカーボンチューブのEQとTSを求めその安定性を議論)と12件の学会発表(うち1件は国際学会(新規CNハイブリッド構造についてのIQCQでの発表))を行った。その中には、結晶の「充填率」に着目した基本的結晶構造探索についての提案(SRPS2018、P9)も含まれている。 令和元年度(平成31年度/2019年度)には、投稿論文を3報(Si結晶にRNM近似を用いた構造予測、BN結晶構造をエネルギーに充填率を掛けた目的関数について超球面探索法で探索した研究、及びアセチレンの反応に関する研究)出版している他、本研究プロセスの中で、新たな着想(「離散原子指定法」/PDrCA法)を得るに至り、アラニンの脱水縮合体、及びシニョリンについての計算なども試みている。(グリシンについての計算結果の投稿が先日新たにアクセプトされた。)学会発表は本年度には11件(うち2件は国際学会(Siの2次元結晶についての発表、及び離散原子指定法に基づくアラニンの脱水縮合体の異性体探索についてのAPATCC-2019でのInvited Communication))を行っている。なお本研究により得られた研究成果の中には未投稿のものもあり、今後の追加投稿を予定している。
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