アルケン類のE-Z異性化反応は可逆的な反応であり、一般的には熱力学的なE体アルケンが優先的に得られる。熱力学的にE体からZ体へ異性化させることは困難であり、この反応を達成する為には光反応が用いられている。一方で、光励起を必要としない、熱反応による異性化はほとんど例がない。本研究は、遷移金属二核錯体のアルケン類に対する付加反応と脱離反応過程における遷移状態制御を制御する事により、E-Z選択的異性化反応の開発を目的とする。 本年度は、パラジウム二核錯体に対するジエン類の立体反転およびオレフィンのトランスメタル化の機構について検討した結果、これらの反応が立体選択的に進行することを見いだした。Syn-脱離およびAnti-脱離それぞれから、Z体を主生成物として得られることが明らかとなり、条件によってE体からZ体へと高選択的に異性化させることが可能であることを見出した。このことは、ジエン類の脱離段階における遷移状態が制御されていることを意味しており、遷移状態制御に関して重要な進展を得たと考えている。
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