研究課題
一般的に、動物の形態パターンは、遺伝的ネットワークで固定されていると思われているが、自然界では後天的環境要因に適合した発生プログラムの変化に起因した形態パターンのゆらぎが見られることがしばしばある。多くの鳥類の前肢は 3 本の指からなるが、草原などに棲息するエミューは、前肢に 1 本の指しかもたないとされていた。しかし、エミューの成体の骨パターンを観察したところ、同一種内にもかかわらず、前肢の指パターンにはバリエーションがあることがわかった。これは、エミューの指パターンは、遺伝的な要因に加えて、後天的な因子により決定されることを示している。そこで本研究では、エミューの指パターンに着目し、指パターンに“ゆらぎ”を惹起する要因を明らかにすることを目的として研究を行った。この目的で、各種鳥類の胚の初期肢芽において候補遺伝子を探索したところ、指パターンに対応した発現を示す遺伝子が同定された。さらに、エミューの前肢芽でのみ、この遺伝子の発現パターンに有意にゆらぎが存在することが明らかとなった。また、本研究の遂行により、エミューの前肢パターンには、今回見つけた遺伝子の発現パターンのゆらぎだけでは説明できない個体差も存在していることが示唆された。
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Scientific Reports
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http://www.evodevo.bio.titech.ac.jp/