研究課題/領域番号 |
17KT0110
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岩楯 好昭 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40298170)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | ケラトサイト / 細胞遊走 / ミオシン / アクチン |
研究実績の概要 |
遊走は原生生物アメーバから神経組織の形成にまで見られる普遍的な細胞機 能である。多くの細胞種は基質に接着さえすれば、誘引物質等が無くても、前後極性を自律的に形成し遊走できる。本研究の目的はこの自律的な前後極性形成メカニズムの解明である。走化性遊走等では“極性”は細胞外に誘引物質の濃度勾配等としてはじめから存在するので、細胞内のシグナル伝達経路の分子実体の同定がメカニズムの解明になる。一方、細胞外に極性が存在しない場合、細胞の中で極性が自律的に創り出される仕組みを知ることからメカニズムの解明が始まる。そのためには、最適な材料で極性形成を人為的に再現し、どうやって極性ができるのか、その形成過程を見ることが必要だと、我々は着想した。 魚類上皮細胞ケラトサイトやその断片は、後部にストレスファイバを持つ。ストレスファイバはアクトミオシン(アクチンとミオシン II からなる繊維)が太く長く成熟した構造体である。両端で接着斑を介して基質に接着し、基質を牽引すると同時に自身に張力を発生させている。我々は最近、遊走中のケラトサイトのストレスファイバをレーザーで焼き切ると、前後極性が破綻することを発見した。この発見はストレスファイバが前後極性を形成していることを示唆している。本研究では、アクトミオシンの収縮による張力の増大がミオシン II を集積させ、さらなる収縮とミオシン II 集積が起きる。この正のフィードバックでアクトミオシンが増大しストレスファイバに成熟し細胞が前後極性を創成すると仮定しこれを証明する。本年度は、ケラトサイトを人為的に断片化すると、ストレスファイバが基質牽引力の増大に伴って形成され、断片に前後極性が形成されることを明らかにするために、断片化ケラトサイトの牽引力測定を試み、これに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究室の引越し、代表者の怪我による入院などがあったが、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ケラトサイト断片の牽引力とストレスファイバ形成、細胞の前後極性形成との関係を明らかにする。また、ケラトサイト細胞の融合細胞の前後極性形成、オオアメーバ細胞にケラトサイト細胞質を導入したときの細胞の前後極性形成等を光学顕微鏡したで観察し検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、予定していた高額な薬品類、物品が、他の研究計画と共通して使えるものであり、そちらの研究費でまかなえた。これは、次年度の研究の進行に際し、 技術補佐員の雇用などに充当し研究の質と量のさらなる発展につなげる。また、同時に、論文投稿費用など成果発表のための費用に充当する。
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