研究課題/領域番号 |
17KT0119
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小松 志朗 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40507109)
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研究分担者 |
浅井 雄介 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, AMR臨床リファレンスセンター, 研究員 (70779991)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2022-03-31
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キーワード | 感染症 / 人の国際移動 / 往来制限 / 新型コロナウイルス / 世界保健機関(WHO) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グローバルな感染症対策における人の国際移動の管理の課題と、その解決策を明らかにすることである。当初予定していた研究事例は、2009年の新型インフルエンザと2014年のエボラ出血熱の2つのみだったが、研究期間の途中で新型コロナウイルスが発生したため、それも事例に追加した。今年度はこの新しい事例を中心に研究を進め、主に以下の点を明らかにした。 2020年、新型コロナウイルスの国際的な感染拡大を受けて世界中の国々が部分的または全面的に人の国際移動を止める往来制限(渡航制限、出入国制限)を始めた。しかしそもそも往来制限は、国際保健分野の現行制度(WHOと国際保健規則)では推奨されてこなかった。その意味で、今回の事例を機にグローバルな感染症対策の方向性は大きく変わるかもしれない。ただし注意すべきは、往来制限が否定的にみられてきたことの歴史的背景として、20世紀にそれが感染国の報告・情報共有のインセンティブを下げる問題が起きていたことである。従って、往来制限を感染症対策として活用するにしても、その問題を考慮しなければならない。 一方で、新型コロナウイルスの事例を機に、往来制限の効果の科学的評価に変化の兆しが出てきた点も見逃せない。最新の研究により、往来制限の効果は低いという従来の一般的な評価が修正される可能性が出てきたのである。WHOはそうした科学的評価を一つの根拠に往来制限を推奨してこなかったので、今後は方針の転換が求められるかもしれない。 さらに、日本政府が行ったチャーター便による武漢在住の邦人救出について、微分方程式による数理モデルを構築し、救出の効果の推定と時期を加味したシナリオ分析も行った。この時の日本の経験が、往来制限をめぐる議論にどのような示唆を与えるのかについては、次年度の研究課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗が遅れた主な理由として、まず挙げられるのは、新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の出張ができなくなったこと、および代表者と分担者の打ち合わせに一定の制約が生まれたことである。加えて、新型コロナウイルスの事例では、過去になかった新しい動きが次々と現れ、それらを分析したり、理論的に整理したりするのに多くの時間を要したことも理由としてある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は研究期間を再延長し、次年度が最終年度になるので、最終的な研究成果をまとめる段階に入っていく。当初の研究計画にはなかった新型コロナウイルスの事例も十分に踏まえて、グローバルな感染症対策における人の国際移動の管理のあり方について結論を導き出したい。そのためには、代表者が取り組んできた国際関係論の研究と、分担者が取り組んできた理論疫学の研究を統合することが最大の課題であることから、オンラインでの打ち合わせを綿密に行う。 本研究の方法の一つとしてインタビュー調査を予定していたが、新型コロナウイルスの感染状況を見る限り、次年度もその実施は難しいように思われるため、代替策としてオンラインや電話での調査に切り替える。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、インタビュー調査のための出張計画を中止し、研究期間の再延長を見据えて次年度に出張を行うための予算を確保した。
【計画】次年度も出張は難しい状況が続くことが予想されるので、他の目的での使用も検討する。例えば、旅費が必要ない分インタビューの回数を増やしてその謝金に充てる、ウェビナーの開催費用に充てる、図書の購入を増やすといった選択肢を念頭に置いている。
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