研究課題
昨年度に引き続きオミックス解析ツールの開発を進め、小規模の試験的データを用いたアルゴリズムの検証と実装整合性の確認作業が完了し、実データへの解析に移行している。解析対象の複雑系疾病群の検体からは、昨年度解析した遺伝子発現情報・代謝物情報に加え、ゲノム情報(肺高血圧症175検体、HTLV-1関連疾患6,444検体、IgG4関連疾患891検体、好酸球性消化管疾患336検体の網羅的一塩基多型タイピング)を収集した。比較対照群として利用するながはまコホート検体についても、約8,000検体の代謝物測定、300検体の遺伝子発現解析が完了しており、患者群・対照群のオミックスデータ収集が順調に進んでいる。対照群の代謝物情報を用いた相関解析およびゲノムワイド関連解析からは、主要な代謝物ネットワークの存在や、各代謝物量との強い関連を示すゲノム領域の存在が示唆された。また、疾患間の代謝物量の比較分析により、特に好酸球性消化器疾患と関連する代謝物が検出されている。本代謝物量は治療介入前後においても変動が認められることから、病態を把握する上で重要なバイオマーカーとなる可能性がある。また、同様の解析によってHTLV-1関連疾患やIgG4関連疾患においても、疾患との関連するゲノム領域が認められている。次年度も引き続き、各対象疾患の検体とオミックス情報の継続的な収集に努め、必要に応じて全ゲノム解析やターゲットシークエンス解析等の追加実験および解析アルゴリズムの改良によって当該結果を検証し、複雑系疾患群の病因・病態の解明を進める。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に沿って、JAVA言語をベースとした多階層テンソル因子分解アルゴリズムの実装、変分ベイズ法に基づくモデル実装を行い、複雑なオミックスデータ情報を柔軟に統合・圧縮し、複雑系疾病の解明に有用な特徴量を抽出するための、新規方法論の開発とアルゴリズムの実装を進めた。本年度は、試験的データを用いて実装整合性の検証が完了し、実データを用いた解析に移行している。解析対象の複雑系疾病については、肺高血圧症172検体(44症例)、HTLV-1関連疾患4,515症例、IgG4関連疾患214検体(83症例)、好酸球性消化管疾患471検体(367症例)の時系列検体を収集した。収集検体の一部については、発現解析(IgG4関連疾患:91検体、肺高血圧症:171検体、好酸球性消化管疾患:102検体)、代謝物解析(IgG4関連疾患:154検体、肺高血圧症:172検体、好酸球性消化管疾患:208検体)、ゲノム解析(肺高血圧症175検体、HTLV-1関連疾患6,444検体、IgG4関連疾患891検体、好酸球性消化管疾患336検体の網羅的一塩基多型タイピング)が終了しており、ツール開発ならびに各解析対象疾患の検体収集・オミックス解析が順調に進んでいるため。
ツールの開発と検証はほぼ完了したため、各対象疾患の追加検体の収集とオミックス解析に注力し、既に関連が示唆されている代謝物やゲノム領域について更なる検討を進め、複雑系疾病群の病因・病態を解明に有用な知見の導出を目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Kidney International
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