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2017 年度 実施状況報告書

時空間マルチオミクスデータに基づくシステム肥満症学の構築

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0126
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

田中 智洋  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20402894)

研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2020-03-31
キーワード肥満症 / 生体恒常性 / 臓器連関 / システム医学
研究実績の概要

多細胞生物の恒常性制御は、分子間、局所細胞間、臓器間など複数の階層における、多数のモダリティの相互関連性に基づき自己組織化される性質から複雑系生命現象の代表例の1つと考えられてきた。われわれ動物にとっては食物摂取によるエネルギー代謝の維持が生存のための最も根源的な活動であることから、栄養・エネルギー代謝の恒常性は最も基本的なシステムであり、その破綻としての肥満や痩せは、われわれにとってもっとも身近な症候である。近年、栄養代謝異常と関連する種々の臓器内分子病態や、臓器間を結ぶホルモンや自律神経系の異常が明らかとなってきたが、肥満や肥満の病態を複雑系現象として捉えシステム生物学の観点から理解しようとする取り組みは必ずしも十分ではない。視床下部は生体の恒常性調節に重要な役割を有する微小脳領域(神経核)の集合体である。本研究では、食欲やエネルギー消費の制御中枢である視床下部神経核の網羅的分子解析により、肥満におけるその機能破綻の分子実体をシステム論的に理解することを目指して研究している。これまでに、マウスへの高脂肪食負荷による視床下部弓状核、室傍核、外側核に生じる分子動態変化についてトランスクリプトーム、リピドームの方法により解析を行い、これら中枢神経系における変化を末梢代謝変化の時間軸と対照して記述した。その結果、視床下部リピドーム変化は高脂肪食負荷期間に応じて量的に変化し視床下部リポトキシシティを誘導したのに対し、トランスクリプトーム変化はサンプリングのタイムポイントに依存して質的・不連続であり、異なる機能と関連付けられる遺伝子群の発現が入れ替わり立ち替わり生じることが明らかとなった。これらの結果は、外部環境変化による内部環境の攪乱への忍容性としてのメタボローム変化と、病態のステージ特異的な生体応答と関連するトランスクリプトーム変化の違いを物語るものと解釈された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウス視床下部由来の神経核微小サンプルからの高純度RNA、高純度脂質抽出のプロセスにおいて若干の遅延が生じたため、一部のwet実験が次年度に持ち越しとなってしまった。しかし、この問題の原因は平成29年度中に明確にすることができたため、平成30年度早期にこの点を克服して実験を進めることが可能と考えている。また網羅解析により同定した分子の発現パタンを解析するために使用する共焦点顕微鏡に故障が生じ、修理が完了するまで実験が一時的にストップした。現在は修理が完了しており、実際に実験が推進できている。

今後の研究の推進方策

今後はまず、視床下部食欲・エネルギー代謝中枢に対し、実現可能な全ての階層のオミクス科学(たとえばフードミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、リン酸化プロテオミクス、メタボロミクス)を実施し、これらの多次元情報を相互連結可能にするべく肥満症の病期理解のための末梢代謝変化に基づく基準の軸を確立する。次にオミクスデータ間相互の関連解析を統計学的方法と、生物学的・生化学的・解剖学的方法(KEGGデータベース・LipidMaps等の生化学的情報、ニューロンの投射先に関する解剖学的知見)の両方により行い、肥満症において視床下部で時空間的に展開する現象を統合的に表現する。そして最後に肥満症における既知の代謝異常(主に末梢臓器)発症や血中代謝パラメータの変化を申請者らの肥満モデルにおいて実証し、視床下部の分子病態による基準軸に対応させてマッピングし、視床下部分子病態との関連での理解を試みる。これらにより、全身のさまざまな臓器、さまざまなサイズレベル(分子、細胞、組織)、さまざまな物質レベル(遺伝子、タンパク質、代謝産物)で進行する肥満症の病態を単一の基準軸の上で論じることができるだけでなく、それぞれ単独の解析では見えなかった、新しい制御原理や制御破綻の規則性、病態進行の自己組織化性の同定を目指す。

次年度使用額が生じた理由

マウス視床下部由来の神経核微小サンプルからの高純度RNA、高純度脂質抽出のプロセスにおいて若干の遅延が生じたため、一部のwet実験が次年度に持ち越しとなってしまった。しかし、この問題の原因は平成29年度中に明確にすることができたため、平成30年度早期にこの点を克服して実験を進めることが可能と考えている。また網羅解析により同定した分子の発現パタンを解析するために使用する共焦点顕微鏡に故障が生じ、修理が完了するまで実験が一時的にストップした。現在は修理が完了しており、実際に実験が推進できている。これらの事情により、平成29年度中に計画していた実験を平成30年度に回す必要が生じ次年度使用額が発生した。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] CLICK: one-step generation of conditional knockout mice.2018

    • 著者名/発表者名
      Miyasaka Y, Uno Y, Yoshimi K, Kunihiro Y, Yoshimura T, Tanaka T, Ishikubo H, Hiraoka Y, Takemoto N, Tanaka T, Ooguchi Y, Skehel P, Aida T, Takeda J, Mashimo T.
    • 雑誌名

      BMC Genomics.

      巻: 19 ページ: 318

    • DOI

      10.1186/s12864-018-4713-y.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Glucagon promotes colon cancer cell growth via regulating AMPK and MAPK pathways2018

    • 著者名/発表者名
      Yagi Takashi、Kubota Eiji、Koyama Hiroyuki、Tanaka Tomohiro、Kataoka Hiromi、Imaeda Kenro、Joh Takashi
    • 雑誌名

      Oncotarget

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      10.18632/oncotarget.24367

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] An Autopsy Case of Pulmonary Tumor Thrombotic Microangiopathy Due to Rapidly Progressing Colon Cancer in a Patient with Type 2 Diabetes.2018

    • 著者名/発表者名
      H. Oguchi, K. Imaeda, A. Hotta, S. Kakoi, S. Yasuda, Y. Shimizu, A. Hayakawa, H. Mishima, C. Hasegawa, S. Ito, K. Ogawa, Y. Yagi, H. Koyama, T. Tanaka, H. Kato, S.Takahashi, T. Joh
    • 雑誌名

      Internal Medicine

      巻: 印刷中 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Switching of other dipeptidyl peptidase 4 inhibitors to alogliptin improves glycemic control in Japanese patients with type2 diabetes mellitus.2018

    • 著者名/発表者名
      T. Yagi, T. Tanaka, Y. Hayashi, T. Mizuno, K. Ogawa, H. Koyama, K. Imaeda, T. Joh
    • 雑誌名

      Nagoya Medical Journal

      巻: 印刷中 ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] Spatio-Temporal Signatures of Hypothalamic Transcriptome/Metabolome in Obesity2017

    • 著者名/発表者名
      T Tanaka, T Sonoyama, K Kaneko, H Koyama, D Aotani, Y Nabeshima, K Nakao
    • 学会等名
      2nd International Syomposium of Kyoto Biomolecular Mass Spectrometry Society
  • [学会発表] Spatio-Temporal Signatures of Hypothalamic Transcriptome/Metabolome in Obesity2017

    • 著者名/発表者名
      T. Tanaka, T. Sonoyama, K.Kaneko, T. Unzai, Y.Ogino, T. Guo, K.Kobayashi, H. Koyama, D. Aotani, K. Inada, K.Nakao.
    • 学会等名
      The Obesity Society 2017
  • [学会発表] 脂肪細胞のβKlothoによる血中アミノ酸恒常性の制御2017

    • 著者名/発表者名
      田中智洋、鍋島陽一
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 消化管ホルモンによる視床下部GPCR-Rap1経路を介したレプチン感受性モデュレート機構の発見2017

    • 著者名/発表者名
      金子賢太朗、Pingwen Xu、Elizabeth Cordonier、Yong Xu、青谷大介、田中智洋、中尾一和、福田真
    • 学会等名
      第44回日本神経内分泌学会学術集会
  • [学会発表] 比較トランスクリプトーム解析による視床下部摂食関連神経核の機能的特徴抽出のこころみ2017

    • 著者名/発表者名
      田中智洋、園山拓洋、金子賢太朗、雲財知、小林加奈子、小山博之、青谷大介、荻野陽平、Tingting Guo、今枝憲郎、中尾一和
    • 学会等名
      第38回日本肥満学会

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公開日: 2018-12-17  

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