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2017 年度 実施状況報告書

一塩基多型特異的RNAスプライシングの探索と応用

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0128
研究機関九州大学

研究代表者

佐藤 哲也  九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (00457425)

研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2019-03-31
キーワード個別化医療 / SNPs / RNAスプライシング / バイオインフォマティクス / トランスクリプトーム
研究実績の概要

疾病発症や病態進行の原因を解明するため、様々な遺伝要因や環境要因の探索が行われてきた。中でも遺伝要因である一塩基多型(SNP)の解析は大規模に行われ、疾患に関連するSNPsが数多く同定された。しかし、疾患関連SNPsの中で、疾患原因遺伝子のコーディング領域に存在するものは全体のわずか10%しかなく、その多くは原因遺伝子との関連がわかっていない。そこで本研究では、RNAスプライシングを通して、翻訳産物に対して劇的な変化をもたらす重大な遺伝子多型を同定する。具体的には、1000人ゲノム計画等ヒト臨床サンプルの遺伝子発現(RNA-seq)データを利用して、ヒトで実際に起こっているSNPsと関連したRNAスプライシングの解明を目指す。本研究の結果、個人差で見られるRNAスプライシングパターンと病態進行の程度との間の関係を明らかにすることで、複雑な病態の詳細な理解へとつながることが期待される。
本年度の研究では、臨床サンプルデータを使って、実際にヒトの生体内で起こっているSNPsと関連したRNAスプライシング(エクソン・スキッピング)現象を見つけ出した。1000人ゲノム計画に関連する462人分のRNA-Seqデータを用いて、SNPsとそれらに対応するスプライシングの検出を行った。また、The Cancer Genome Atlas (TCGA) データベースでは、がん患者のSNPs情報とRNA-Seqデータを入手することができる。TCGAデータに対しても同様な解析を行うために、配列データを入手した。以上のデータ解析より、1塩基の違いによってRNAスプライシングパターンが劇的に変化するエクソンを見つけ出すことに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度の研究では、SNPsと関連したRNAスプライシング(エクソン・スキッピング)現象を見つけ出すために、1000人ゲノム計画に関連するデータ及びTCGAデータベースから配列データを入手して、RNAスプライシングパターンの検出を試みた。具体的なデータ解析として、通常のRNA-Seq解析パイプラインに加えてSNPs検出用のプログラムを組み込んだ。そして、スキッピングエクソンとSNPsが一致するエクソン領域を抽出した。さらに、スプライシングエクソンの生物学的意義を調べるために、読枠に注意しながらアミノ酸配列に翻訳してペプチド断片を算出した。得られた断片にどのような機能があるかを確認するために、タンパク質ドメイン検索や立体構造情報との対応を調べた。以上の解析手順により、1000人ゲノム計画に関連するデータに対しては、1塩基の違いによってRNAスプライシングパターンが劇的に変化するエクソン約50個を見つけ出すことに成功した。一方、TCGAデータに対する解析では、配列データの入手までしか終了していないことから、本年度の計画内容を達成し「やや遅れている」とした。

今後の研究の推進方策

本年度に同定されたSNPsとエクソン情報から、SNPsに影響を受けるRNAスプライシングを検出し、さらにスプライシングエクソン翻訳領域の機能を予測するプログラムを作成する。RNAスプライシングに関与するSNPsを検出して、その翻訳産物の機能を推定するためのプログラムツールは未だ開発されていない。本年度で実施したデータ解析アルゴリズムを実装する新規プログラムを作成する。また、がん患者のSNPsと関連するスプライシングエクソンがどのような疾病と関連しているかを明らかにし、病態の進行を予測するためのモデルを構築する。以上のデータ解析より、SNPsと病態との間の関係を解明することによって、複雑な疾病の詳細な理解へと繋がることが期待される。最終的に、本研究で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

本年度配分額のうちおよそ64千円が次年度繰越となった。その理由は、学会での成果発表を延期したためである。次年度は、この繰越金を加えた額で、次世代シーケンサーによる配列決定用試薬の購入や研究打ち合わせのための旅費に使用する計画である。

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公開日: 2018-12-17  

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