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2018 年度 実施状況報告書

パーキンソン病における血液脳関門を介した臓器連環のトランスオミクス解析

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0130
研究機関順天堂大学

研究代表者

福原 武志  順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20359673)

研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2020-03-31
キーワードバイオマーカー / パーキンソン病 / 炎症
研究実績の概要

パーキンソン病患者血液から、バイオマーカー探索の計画を立案して推進している。初年度には特設領域研究としてデータベース構築ならびにトランスオミクスの視座によりバイオマーカー探索を進めることを計画した。2年目には代謝バイオマーカーの探索から早期PDに特徴的な発現変化を示すバイオマーカーを同定して論文発表を行った(Scientific Report, 2017)。トランスオミクス的視座から、末梢血液のトランスクリプトームについて理化学研究所のグループと共同でCAGE解析を行い、健常者(10名)に比してPD患者(22名)では上昇する有意な変化を示すと見られた2候補遺伝子を同定した(AmphiregulinおよびThrombomodulin)。しかしながら経年での採血とCAGE解析からその差が減少し、病態進行に伴うバイオマーカーにはならない可能性が示唆された。またTHBDのELISAデータからタンパク質量について検討したが、両者に差は見出されなかった。本研究はその他の遺伝子発現変化についてもデータベースを構築してまとめ論文発表した(Scientific Data, 2019)。炎症タンパク質に関するSecretome解析では、PARK2-PD患者に有意な変化を示す炎症因子の同定ができたため、引き続き解析を進めている。具体的にはヒト脳血管内皮細胞への炎症因子の作用が、どのように遺伝子発現パターンを解析するのか検討を進めている。また得られた炎症経路に対するPD血清およびPARK2変異を持つ細胞が分泌する因子の作用を明らかにする目的で、様々なサイトカインレポーター細胞を導入し、異なる炎症経路への作用を検討する準備を進めた。パーキンソン病と末梢炎症の臓器連関をまとめた日本語総説を報告した(Medical Science Digest 2018, Bioclinica 2018)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初計画されたトランスオミクス解析のうちメタボローム解析は初年度のうちに論文発表したが、所属する神経学講座斉木ら(本特設領域基盤Bの2018年採択課題)によって、PD患者のカフェインおよびその代謝物についての解析からより信頼度の高い初期PDのバイオマーカーとして同定されたことを報告した(Neurology, 2018)。これは代謝物測定における技術的な進歩および問題点克服によるものが大きいと考えているが、さらに重症度相関マーカーについても解析が進められている。本研究で着目するトランスオミクス的視座による共通因子や経路の同定には至っていないものの炎症バイオマーカーについては、一般的な炎症因子だけでなく、脳腸相関に関与するとみられる因子、白血球の組織内浸潤へ至るケモカイン因子をPDの特定コホートに同定した。孤発性または変異を有するPDのタイプにより差が見られるので、これを精査する必要がある。サイトカインレポーター細胞の導入も行い、患者血清だけでなく創薬探索も可能となるアッセイ系を構築することができた。北里大学から供与された中分子化合物ライブラリーの探索により、特定炎症経路の調節化合物と見られる候補物質を見出すこともできた。以上の進捗は、本研究で計画した内容を踏襲した上で、さらに発展的な展開へと進められているため、当初計画よりも進捗していると判断できる。

今後の研究の推進方策

1.炎症バイオマーカーの解析:白血球(マイクログリア、単球、T細胞)にバイオマーカーを添加した際に、どのような表現型変化が惹起されるか検討する。当初の計画どおり、得られたバイオマーカーが血管内皮細胞に及ぼす影響について解析を行う。血管内皮細胞への遊走、接着あるいは浸潤に寄与するか検討するが、ヒトおよびマウス由来の脳血管内皮細胞株および初代培養細胞の利用を予定している。
2.炎症条件下における当該細胞の違いについて遺伝子発現状態を各種の方法にて解析する。様々な知見から、PDにおける炎症の関与は明らかであるが具体的にどの臓器が初発的に作用するかなどは未解明のままである。我々は過去に、PDマウスモデルとしてPARK2ノックアウトマウスを報告しているが、実験動物研究棟の改修工事が終了して繁殖を開始することができる状態になったので、PARK2変異を有する動物の各臓器および由来する初代培養系細胞の解析を併せて行う。ごく最近にSliterらは、強制運動の系において、ParkinおよびPINK1の変異によりSTING経路を介した炎症活性化が増強されて惹起されることを報告した(Nature 2018)。この報告を加味した上で、患者由来血清で得られた炎症バイオマーカーとPARK2ノックアウトマウスで得られる知見との関連相違点について考察を行う予定である。
3.iPS-PARK2 CAGE解析:患者由来に樹立されたiPSを神経細胞に分化誘導してPARK2-iPSのトランスクリプトームについてもCAGE解析を進めている。候補遺伝子のqPCRによる検討を行いトランスオミクス的視座からバイオマーカーの同定に至るか考察を行う予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] パーキンソン病における脳と末梢炎症の臓器連関2018

    • 著者名/発表者名
      福原武志
    • 雑誌名

      Medical Science Digest

      巻: 44 ページ: 71-74

  • [雑誌論文] 脈管系の機能制御から考えるパーキンソン病の炎症と臓器連関2018

    • 著者名/発表者名
      福原武志
    • 雑誌名

      Bio Clinica

      巻: 7 ページ: 148-153

  • [雑誌論文] Rapid dissemination of alpha-synuclein seeds through neural circuits in an in-vivo prion-like seeding experiment.2018

    • 著者名/発表者名
      Okuzumi A, Kurosawa M, Hatano T, Takanashi M, Nojiri S, Fukuhara T, Yamanaka T, Miyazaki H, Yoshinaga S, Furukawa Y, Shimogori T, Hattori N, Nukina N.
    • 雑誌名

      Acta Neuropathologica Communications

      巻: 6 ページ: 96

    • DOI

      10.1186/s40478-018-0587-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 薬物送達能を示す機能性抗体の探索技術とイムノリポソーム開発による機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      福原武志、濱道修生、服部信孝
    • 学会等名
      日本DDS学会
  • [学会発表] Screening technology for potent antibodies modulating endothelial cell functions2018

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Fukuhara and Nobutaka Hattori
    • 学会等名
      日本神経科学会
  • [学会発表] 内皮細胞を標的とした機能性抗体の探索とイムノリポソームによる動態解析2018

    • 著者名/発表者名
      福原武志、竹田亮太、濱道修生、金井仁美、服部信孝
    • 学会等名
      日本生化学会
  • [学会発表] 炎症やストレス応答性に形成される脳脈管系のCD146亜集団2018

    • 著者名/発表者名
      福原武志、竹田亮太、金井仁美、服部信孝
    • 学会等名
      日本血管生物医学会

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公開日: 2023-03-23  

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