研究課題/領域番号 |
17KT0131
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山中 智行 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (00381575)
|
研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
|
キーワード | 神経変性疾患 / αシヌクレイン / アミロイド線維 |
研究実績の概要 |
神経変性疾患では、例え同じ病因タンパク質が凝集・蓄積しても異なる病態、症状を示すことが知られている。病態の複雑性を生み出す発症機構の解明は、疾患多様性に対応した予防・治療への喫緊の課題である。病因タンパク質の1つ、αシヌクレインは、パーキンソン病、多系統萎縮症やレビー小体型認知症で凝集・蓄積する(シヌクレイノパチー)。共通の凝集・蓄積タンパク質がどのようにして多様な病態が生じるかは未だ不明であるが、最近、αシヌクレインが異なるアミロイド線維を形成しうることが報告されており、これとシヌクレイノパチー多様性との関連が指摘されている。今年度は、ヒトαシヌクレインと共に、7つのアミノ酸残基が異なるマウスαシヌクレインに着目し、これらを詳細に比較解析行うことで、凝集体多様性を生み出すメカニズムの同定を試みた。まず、リコンビナントタンパク質の凝集性について検討したところ、マウスαシヌクレインの方がヒトのものより早く凝集することが観察された。また、得られた凝集体をタンパク質分解酵素や変性剤で処理したところ、マウスαシヌクレインの方がこれらに高い感受性を持つこと、また電顕解析により、これら凝集体は異なったアミロイド線維構造を有することを見出した。以上のことから、ヒトαシヌクレインとマウスαシヌクレインは、全長140アミノ酸のうち7残基の違いでも性質の異なる凝集体を形成しうることが明らかとなった。以上をまとめ、生命科学系学会合同年次大会(分子生物学会)のワークショプにて口頭発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リコンビナントタンパク質を用いた解析から、αシヌクレイン凝集体が異なる構造・性質を持つアミロイド線維を形成していることを明らかとしつつある。現在、その分子メカニズムについて解析を進めると共に、ヒトおよびマウスαシヌクレインを用いた異種間クロスシーディング反応を行い、異なるアミロイド線維構造を形成するかについて解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
得られたαシヌクレインの各種凝集体について、これらを培養細胞に導入し、実際細胞内でも異なる凝集体を形成するか、細胞生存に影響するかについて検討を進める。さらに、細胞内凝集体の網羅的質量解析を行い、アミロイド線維の構造依存的なインタラクトームが存在するかを明らかにし、アミロイド線維の多様性がどのようにして異なる病態を引き起こすか、その分子機構の解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
これまでに、αシヌクレインのリコンビナントタンパク質を用いて、異なる凝集体を形成するシステムを確立してきた。次年度は、これらを細胞内に導入し、凝集体を免疫沈降法にて精製しプロテオーム解析を行う予定であるが、そのための細胞培養試薬、タンパク質導入試薬、免疫沈降関連試薬や質量分析などに多額の費用が必要であり、このために研究費が必要となった。
|