研究課題/領域番号 |
17KT0131
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山中 智行 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (00381575)
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研究分担者 |
下郡 智美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (30391981)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2022-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / プロテオミクス / αシヌクレイン / ALS |
研究実績の概要 |
神経変性疾患で未だ解決されていない問題の一つは、なぜ疾患ごとに特異的な領域が障害されるのかということである。さらに、αシヌクレインのようにタンパク質は同じでも、パーキンソン病、多系統萎縮症やレビー小体型認知症など、異なる疾患で凝集していることも知られ、より複雑性を増加させている。どのようにして、このような病態の特異性・多様性が生じるのか、その分子機序の解明は、疾患の発症予防や治療に重要と考えられるが、まだ多くが不明である。本研究は、オミックス、特にプロテオミクスを基盤とした研究により、この問題解明を目指すものである。本年度は、αシヌクレインの凝集体を蛍光標識し、マウス脳内に注入後にフローサイトメトリーで回収し、その局在部位を質量分析にて検討した所、シナプス画分に濃縮されていることを明らかとした(Kasahara J et al. Neurosci Res. 2020)。また、小胞体膜タンパク質であるVAPBについて、その野生型とALS関連変異体を神経系細胞に発現させ、免疫沈降した後質量分析を行うことにより、変異により小胞体のドメイン特性や小胞体-オルガネラ間の相互作用が減少していることを見出した(Yamanaka T et al. Sci Rep. 2020)。また、第93回日本生化学会のシンポジウムにて口頭発表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フローサイトメトリーや免疫沈降法により、凝集体を含む細胞画分を限局し質量分析解析を行うことができるようになってきた。その結果、これまでのバルクでは見えなかった特異的な凝集体プロテオームを同定することに成功しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、マウス脳に構造の異なる凝集体を導入し、細胞内での凝集体の多様性について、生化学的解析を進めるとともに、これら凝集体の分離・精製をさらに進め、網羅的質量解析を行うことにより、凝集体の構造依存的なインタラクトームを解明し、病態多様性との関連性を明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに、αシヌクレインの凝集体構造を解析する系を確立し、ヒトの疾患変異によって、異なる凝集体構造を形成すること(BBA 2019, BBRC 2019)、さらに、同解析系がヒト疾患由来のαシヌクレイン凝集体の構造特定にも有用であることを見出してきた(BBRC 2020)。しかし、より信頼性の高い成果を得るため、タグを排除し、イオン交換カラムやゲルろ過で精製したより純度の高いαシヌクレインタンパク質が必要となった。その確立に時間がかかったため、多額の費用がかかる動物実験や網羅的質量分析を次年度に回すことになった。
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