研究実績の概要 |
神経変性疾患で未だ解決されていない問題の一つは、なぜ疾患ごとに特異的な領域が障害されるのかということである。さらに、αシヌクレインのようにタンパク質は同じでも、パーキンソン病、多系統萎縮症やレビー小体型認知症など、異なる疾患で凝集していることも知られ、より複雑性を増加させている。どのようにして、このような病態の特異性・多様性が生じるのか、その分子機序の解明は、疾患の発症予防や治療に重要と考えられるが、まだ多くが不明である。本研究は、オミックス、特にプロテオミクスを基盤とした研究により、この問題解明を目指すものである。本年度は、αシヌクレインの変異体タンパク質ライブラリーを作成し、その変異を網羅的プロテオミクスにより同定する実験系を確立することにより、凝集に影響する変異部位を複数同定することに成功し、第44回日本分子生物学会年会のワークショプで報告した。また、プロテオミクスを用いた解析から、αシヌクレインなどの低複雑性タンパク質が脳内で熱耐性画分に濃縮すること(Park H, Yamanaka T e al. Sci Rep. 2022)、さらにアミノ酸分析と組み合わせることにより、neuronal intranuclear inclusion diseaseの脳内で蓄積する新規タンパク質Hornerinを同定した(Park H, Yamanaka T e al. Acta Neuropathol Commun. 2022)。
|