研究課題/領域番号 |
17KT0133
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
國部 雅大 筑波大学, 体育系, 助教 (70707934)
|
研究分担者 |
齊藤 まゆみ 筑波大学, 体育系, 准教授 (00223339)
|
研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2021-03-31
|
キーワード | 聴覚情報 / 実験系心理学 / ブラインドサッカー / 音源定位 / 反応時間 / ボールトラップ / 状況判断 / 球技 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、スポーツを行う際に音や声などの聴覚情報がどのように用いられているかについて、運動心理学的観点から検討することを目的とした。研究3年度目は、ブラインドサッカーや野球などの集団でボールを扱うスポーツを対象とし、音や声など各種の聴覚情報を用いながら的確な判断や運動を行う際の情報処理過程に関する特徴を明らかにするための検討を行った。 1つ目に、ブラインドサッカー選手が、ボールから出る音の聴覚情報をどのように利用して的確な運動を行っているかについて検討した。ブラインドサッカー選手および晴眼一般成人を対象に、転がると音が出る専用のボールを用いて、ランダムな方向や速度で転がるボールを閉眼状態で足元にトラップする課題を行った。その結果、ブラインドサッカー選手は晴眼一般成人に比べて、ボールをトラップする際の下方への頭部回転角度変化が大きかった。このことから、接近してくるボールの位置をより正確に把握するために、ボールの方向へと頭部を向けるような音の定位方略を用いていることが示唆された。 2つ目に、野球やソフトボール、バレーボールの選手が、集団内で打球処理に関する判断をする際に声を用いたコミュニケーションをどのように行っているかについて、実際のフィールドでの測定に基づいて検討した。守備を行う選手間に来る打球に対して、守備者のうち誰が打球を処理するかを判断する際に用いる情報や選手間の声かけに関して分析した。その結果、打球を処理する選手に関する判断は、捕球位置の予測や自身が打球を処理することに関する声を用いた意思表示に基づいてなされることが示された。 また本年度は、ブラインドサッカー選手が音の方向を素早く識別できることを示した研究や、野球の捕手が声を用いて送球する塁の指示を行う状況判断を検討した研究が、海外および国内の論文誌に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に構築した聴覚刺激に対する反応時間を測定した実験環境を拡張し、2年度目からは音の出るボールを実際に扱う場面での聴覚情報と身体運動の関係性を検討するための環境を設定して実験を行い、取得したデータの分析が3年度目で概ね完了した。また、実際のスポーツのフィールドを用いた集団での状況判断や意思決定において用いられる声によるコミュニケーションについて検討した実験データの分析を行うことができた。これまでに実施してきた、各種スポーツにおける音や声などの聴覚情報を用いた運動課題について検討した研究成果の一部は、国内外の学会で発表するとともに、海外および国内の学術雑誌に掲載することができた。今後は、音や声によるコミュニケーションの時系列的な分析について、さらに検討を継続していく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は、ボールを扱う運動課題における熟練者の音源定位方略に関する特徴をふまえ、対人や集団で視覚情報を用いずにボールを扱う学習課題を設定し、運動を学習していく過程において用いられる音や声によるコミュニケーションについて、動きとの連動を含めて検討を行う。さらに、晴眼者がボールの音や仲間同士の声での意思疎通を用いるスポーツを継続的に経験することが、集団における心理・対人面にもたらす効果について、量的および質的な検証を試みる。これらの検討を通して、より発展的かつ応用的な知見を得ることを目的として、次年度の研究を遂行していく予定である。
|