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2018 年度 実施状況報告書

相互行為における複様式的知覚と共感的反応の解明―会話分析と概念分析をとおして

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0134
研究機関千葉大学

研究代表者

西阪 仰  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80208173)

研究分担者 早野 薫  日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
山田 圭一  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (30535828)
研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2021-03-31
キーワード会話分析 / ヴィトゲンシュタイン / アスペクト知覚 / 複合感覚 / インストラクション(教授)
研究実績の概要

2018年度は,昨年度収集したビデオデータを主に分析する作業を行なった.その成果の一部は,国際会話分析学会(招待講演および個人報告),「自己他者関係」シンポジウム」(招待講演),「相互行為における教授」ワークショップ,ヨーロッパ学習・教授学会(EARLI),日本現象学会等で,発表された.2018年度に得られた知見には,次のものが含まれる.1) これまでの会話分析研究において広い意味での「知識状態」が行為の構成にとって重要であることが指摘されていたのに対して,知覚に基づくか知識に基づくかにより,行為の構成が変わりうることが見出された.2) 助産師が妊婦に対して触診で胎児の状態を示そうとするとき,触覚と視覚が具体的にどのように統合されるかは,そのときに何が行なわれているかに依存することが見出された.3) 書道の教授の分析をとおして,視覚が複合感覚的であるだけではなく,(感官とは直接関係しない)どう書かれたか(行為)も視覚的に見て取られることが見出された.4) ギターのレッスンにおいて,音は,単に聴覚的現象であるだけではなく,指板上の視覚的位置,指板を抑える指の自己受容感覚を巻き込む現象として利用されることが見出された.5) 保育士,保護者,子どもの三者間会話において,身体接触の生起とその場で進行している知識をめぐるやりとりとの間に連動性があることが確認された.6) 相互行為において書くという視覚的行為は,発話という聴覚的行為と統合され,それによりそれぞれの意味が互いに彫琢されることが見出された.7) 比喩表現をヴィトゲンシュタインのアスペクト概念(とくに概念的な構造的類似性)と関連付けるとともに,「嘆きのメロディを聴く」という知覚経験を,複様式的なアスペクトとして捉えなおした.(千葉大学大学院の荒野侑甫[前年度より]と鈴木南音の両名が研究協力者として加わった.)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

分析をかなり進めることができた.研究実績の概要でも述べたとおり,国内外の多くの学会で,研究成果を報告できた.研究代表者・分担者・協力者のワークショップを1回持つことができ,それをもとに,各自論文をまとめつつある.また,代表者・協力者は,分担者のヴィトゲンシュタインを読む授業にほぼ毎回参加し,議論を重ねることで,共通認識を高めることができた.研究発表欄の業績のほか,研究代表者はすでに2つの論文をまとめ,投稿した(現在,レビュー中もしくは修正中).

今後の研究の推進方策

2019年度は,引き続き,データの収集と分析を行なっていく予定である.これまでの知見を論文にまとめる作業も引き続き行なう.国際語用論学会,国際エスノメソドロジー・会話分析学会,アメリカ社会学会でも報告予定である(いずれも採択済み).とくに国際エスノメソドロジー・会話分析学会においては,研究代表者は,研究実績の概要における1)の知見を展開した報告予定している.視覚も知識も,いずれもパースペクティヴに依存する.このようなパースペクティヴィズムは,例えばニーチェのものが有名だが,しかし,視覚と知識は(ニーチェが想定するように)感情や意志に依存するというよりは,むしろ,現在どのような活動が行なわれているか,どのような活動の資源として動員されているかに依存するように見える.一方で,視覚と知識は,現在の活動に異なる貢献を行なうし,他方で,視覚は,身体の動きに相関的であるという点においてもパースペクティヴ依存的である.このような観点から,知覚・知識・活動の関係をさらに探究できればと考えている.2020年度は,最終年度になるため,データの収集よりも,分析と成果の発表に力を注ぐ予定である.共同研究者間でのワークショップを定期的に行ないながら,学会での研究発表を積極的にも行なうだけでなく,論文の投稿も積極的に行なう予定である.

次年度使用額が生じた理由

2018年度は,新しいデータをあまり集めることができなかった.そのため,かなりの額が残る結果となった.すでに,演劇計画の場面の撮影など,いくつか予定があるので,2019年度に繰越分を使う予定である.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 人は人ならざるものと恋愛することができるのか―「シェイプ・オブ・ウォーター」と「エクス・マキナ」を題材に―2019

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 雑誌名

      フィルカル

      巻: 4 ページ: 136-159

  • [雑誌論文] 会話分析はどこへ向かうのか2018

    • 著者名/発表者名
      西阪仰
    • 雑誌名

      平本毅・横森大輔・増田将伸・戸江哲理・城綾実編『会話分析の広がり』

      巻: 1 ページ: 253-279

  • [雑誌論文] 言葉の意味の変化をもたらす体験とはどのようなものか ―ウィトゲンシュタインの比喩的表現の考察をもとに―2018

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 雑誌名

      科学基礎論研究

      巻: 46 ページ: 1-9

    • DOI

      /doi.org/10.4288/kisoron.46.1_1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 人はAIと恋愛することができるのか2018

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 雑誌名

      吉川孝・横地徳広・池田喬編著、『映画で考える生命環境倫理学』

      巻: 1 ページ: 87-101

  • [雑誌論文] レヴィンソンが牽引するインタラクション研究2018

    • 著者名/発表者名
      早野薫
    • 雑誌名

      語用論研究

      巻: 20 ページ: 160-167

  • [雑誌論文] 認識的テリトリー:知識・経験の区分と会話の組織2018

    • 著者名/発表者名
      早野薫
    • 雑誌名

      平本毅・横森大輔・増田将伸・戸江哲理・城綾実編『会話分析の広がり』

      巻: 1 ページ: 193-224

  • [学会発表] Perception that matters in interaction2018

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 学会等名
      International Conference on Conversation Analysis 2018
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mixed perceptions in instructional settings: seeing under the aspect of proprioception relevant to the current activity2018

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 学会等名
      International Conference on Conversation Analysis 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Seeing how it is done: The sequential organization of instructional actions in a Japanese calligraphy lesson2018

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 学会等名
      EARLI SIG 14 Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 人の悲しみを見るとはいかなることか―ウィトゲンシュタインの直接知覚説―2018

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 学会等名
      日本現象学会

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公開日: 2019-12-27  

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