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2019 年度 実施状況報告書

相互行為における複様式的知覚と共感的反応の解明―会話分析と概念分析をとおして

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0134
研究機関千葉大学

研究代表者

西阪 仰  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80208173)

研究分担者 早野 薫  日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
山田 圭一  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (30535828)
研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2021-03-31
キーワード会話分析 / 相互行為 / アスペクト知覚 / ヴィトゲンシュタイン / 見ること
研究実績の概要

2019年度は,演劇製作に関わる製作者どうし(演出家と美術担当,等)および製作者と俳優との相互行為を,計24時間分ビデオに収録した.このビデオデータの分析を開始するとともに,すでに手元にあるビデオデータを昨年度に引き続き分析した.その成果の一部は,国際エスノメソドロジー・会話分析学会等で,発表された.また,本研究開始以来得られた知見の一部は,4編の論文としてまとめられ,現在,国内外のいくつかの学術誌に採択され掲載が決まっている(研究業績一覧を参照のこと).2019年度に得られた知見には,次のものが含まれる.1) アウトドアでの様々な相互行為の分析を通して,同じ対象・出来事を同じ行為において見ているときも,その行為がどの前後関係の中でなされるかによって,その同じ対象・出来事の「見え方」が変わってくることが見出された. 2) 書道の教授の教授者により言葉と身振りにより教えられた筆遣いを,その場ですぐに学習者が実行できない環境において,学習者は,相互行為の展開にできるだけ影響を与えない形で(すなわち教授行為の間の移行時に)一人で身振りを繰り返すことにより,何を学んだかを実演することが見出された.3) 演劇製作者たちが,絵を描きながら舞台作りの相談する場面において,絵を描くという行為,そのつど紙の上に現われる絵,その絵の上で行なわれる手振り,そして発話が,相互行為の局所的な展開の中で,互いの意味を彫琢し合うことが見出された.4) 指さしと指示表現(「これ」等)により語を学ぶためには,指示された対象を超えた語の一般的な適用の仕方を学ぶ必要がある.ウィトゲンシュタインの「アスペクト知覚」(同じ対象の多様な知覚)の考えを用いることで,対象を個物ではなく範例として見る見方が想定でき、この問題を解消できることがわかった.(荒野侑甫と鈴木南音の両名が研究協力者として加わった.)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要でも述べたとおり,いくつかの論文が,査読付きの学会誌に採択された.現在も,いくつか投稿予定の論文を準備中である.また,国内外のいくつか学会で,研究成果を報告することもできた.研究代表者・分担者による研究会も1回持つことができ,とくに,行為者と知識の関係,あるいは目の前の対象を,その対象をもたらした原因とともに見るという知覚のあり方(「原因相」知覚)について,次の展開に向けた有益な議論ができた.

今後の研究の推進方策

2019年度は,引き続き,データの収集と分析を行なっていく予定である.これまでの知見を論文にまとめる作業も引き続き行なう.アメリカ社会学会でも報告予定である(採択済み).また,日本社会学など国内の学会にも応募予定である.2019年度の成果を引き継ぐ2020年度のトピックとして,次のものが現在考えられる.1) 情報伝達が行なわれるときは,その情報が受け手にとって新奇なものであるかどうか,ということが,つねに問題となる.つまり,そこでは誰が(どちらが)何を(よりよく)知っているかは,端的に行為者間の争点となりうる.しかし,知識配分問題は,他の様々な行為においても,つねに問題となりうる(知識を持たない者による聞き返しが,単なる質問になるのに対して,知識を持つ者による聞き返しは非難となりうる,というように).このような知識配分問題は,行為の「見え方」の問題として捉え直せるかもしれない.2) 対象を,それがいかにもたらされたかとともに見るという視点は,芸術作品を見ることと密接にかかわりうる.例えば,歩く演技を見るときは,そこに「歩く」ことを見て取るだけでなく,いかに演じているかを同時に見るし,風景画を見るとき,そこに特定場所の風景を見て取るだけでなく,どうそれが書かれているかを同時に見る(研究業績欄の書道に関する論文参照).このような芸術作品の見え方を知覚の問題として捉えることも,試みたい.2020年度は,最終年度になるため,データの収集よりも,分析と成果の発表に力を注ぐ予定である.共同研究者間でのワークショップを定期的に行ないながら,学会での研究発表を積極的に行なうとともに,論文の投稿もさらに積極的に行なう予定である.

次年度使用額が生じた理由

2019年度は,文献購入のために確保した予算の大半が残ることになった.この1年の間に新たな関連文献が思いのほか出版されなかったことによる.2020年度は,成果を国内でも研究発表を行なっていくので,そのための旅費として繰越分を使う予定である.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Appearance and Action: Sequential Organization of Instructions in Japanese Calligraphy Lessons2020

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 雑誌名

      Research on Language and Social Interaction

      巻: 53 ページ: 未定

    • DOI

      https://doi.org/10.1080/08351813.2020.1739428

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Guided Touch: Sequential Organization of Feeling a Fetus at Japanese Midwifery Practices2020

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 雑誌名

      A. Cekaite & L. Mondada (Eds.), Touching Moments

      巻: 1 ページ: 未定

  • [雑誌論文] Doing reflecting: Embodied solitary confirmation of instructed enactment2020

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Arano
    • 雑誌名

      Discourse Studies

      巻: 22 ページ: 未定

    • DOI

      https://doi.org/10.1177/1461445620906037

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Postscript: Thing and space2019

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 雑誌名

      Dennis Day and Johaness Wagner (eds.), Objects, Bodies and Work Practice

      巻: 1 ページ: 285-294

  • [雑誌論文] 会話分析トレーニング・セッション2019

    • 著者名/発表者名
      西阪 仰
    • 雑誌名

      日本語学

      巻: 38 ページ: 46-56

  • [雑誌論文] 言葉の学習におけるアスペクト知覚の役割―ウィトゲンシュタインの直示的教示の考察を通じて―2019

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 雑誌名

      人文科学研究(千葉大学文学部編)

      巻: 49 ページ: 51-69

    • DOI

      10.20776/S03862097-49-P51

  • [雑誌論文] 眺望から人称を排除することができるのか―野矢茂樹『心という難問 空間・身体・意味』への懐疑論者からの応答―2019

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 雑誌名

      科学基礎論研究(科学基礎論学会編)

      巻: 47 ページ: 47-55

    • DOI

      https://doi.org/10.4288/kisoron.47.1_47

    • 査読あり
  • [学会発表] The ascribability of action in interaction: Revisiting the status/stance distinction2020

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 学会等名
      American Sociological Association
  • [学会発表] Partitioning the Participation Population Space in Reaching a Mutual Agreement2019

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 学会等名
      American Sociological Association
  • [学会発表] Accomplishing the Intelligibility of the Distinctiveness of Activity2019

    • 著者名/発表者名
      Tomone Komiya & Aug Nishizaka
    • 学会等名
      American Sociological Association
  • [学会発表] The differentially ascribable nature of seeing: Projects and visual perception2019

    • 著者名/発表者名
      Aug Nishizaka
    • 学会等名
      Conference of the International Institute for Ethnomethodology and Conversation Analysis
    • 国際学会
  • [学会発表] 感覚は言語によってどこまで伝えることができるのか ―ウィトゲンシュタインの私的言語論を手がかりに―2019

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 学会等名
      第3回 人間知・脳・AIセミナー
  • [学会発表] Off-stage negotiation of who is going to serve: Resources for embodying requests and offers2019

    • 著者名/発表者名
      Kaoru Hayano
    • 学会等名
      第16回国際語用論学会
    • 国際学会
  • [備考] 西阪研究室 Aug Nishizaka

    • URL

      www.augnishizaka.com

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公開日: 2021-01-27  

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