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2020 年度 実施状況報告書

相互行為における複様式的知覚と共感的反応の解明―会話分析と概念分析をとおして

研究課題

研究課題/領域番号 17KT0134
研究機関千葉大学

研究代表者

西阪 仰  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80208173)

研究分担者 早野 薫  日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
山田 圭一  千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (30535828)
研究期間 (年度) 2017-07-18 – 2022-03-31
キーワード知覚 / マルチモダリティ / ウィトゲンシュタイン / 会話分析 / 相互行為 / 知識
研究実績の概要

本年度は,新型コロナ感染症の感染の広がりのため,新しいデータの収集は一切できなかった.そのため,研究組織のメンバーそれぞれが,これまでのデータの分析や哲学的な知見をまとめることに専念した.本年度は以下の点について考察を行なった.1) 他者の情動が直接知覚されるといえる場合がある.そのときの経験のあり方を,ウィトゲンシュタインのアスペクト知覚(同じ対象を異なるふうに知覚すること)のアイデアを用いて,哲学的に分析した.2) ウィトゲンシュタインは,言語ゲームのルールと眼目(そもそもそのゲームが何を目指すものであるか,など)の区別を示唆している.この区別と行為記述の可能性の条件の関係を,哲学的に分析した.3) 同じ対象であっても,それをどの程度細かく見るかは,相互行為のコンテクストに依存する.ここから,見ることの「正確さ」は,あくまでも相互行為の組織の一側面として理解されるべきであることを,会話分析の手法により明らかにした.4) 知識や権限の実際の配分と,実際に自身の知識や権限をどう表現するかの間の違い(例えば,命令権者が,「~お願いします」とお願いの形で――すなわち,あたかも実行の権限は被命令者にあるかのように――命令を行なうことがある)について,会話分析の手法により考察した.とくに知識等の「実際」の配分をどう分析的に扱うかを検討するとともに,現在,それが発言順番の割り当てに重要な帰結をもたらすことを明らかにしつつある.5) 相互行為能力が未発達の乳児・幼児に話しかけるというプラクティスが相互行為をどのように組織するのか,分析を進めた.6) 複数の言語が話される相互行為において,参加者は,ある言語の所有権と知識の配分に志向していることを明らかにした.得られた知見のうち,いくつかは研究会や学会で発表した.(今年度も,研究協力者として,荒野侑甫と鈴木南音の2名が加わった.)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナ感染症の影響により,新たなデータ収集がまったくできなかった.所属機関の授業がすべてオンライン化したことへの対応で,研究に多くの時間を割くこともできなかった.研究会なども,結局一度も開催できなかった.一方,それぞれが(手元のデータ等を用いて)分析を進め,知見をまとめるという点については,基本的なことはできた.いくつか論文を発表するとともに,得られた知見について学会報告もできた(研究業績欄を参照のこと).

今後の研究の推進方策

2021年度も,新型コロナ感染症の厳しい状況のなかで始まり,データ収集再開のめどはたっていない.ますば,これまで集めたデータを集中的に,分析し,研究実績の概要で述べた知見を論文としてまとめることを目指す.引き続き,ヴィトゲンシュタインの「アスペクトを見ること」(同じ対象が,異って見えること)という考えを,相互行為の組織を分析するための視角として用いながら,以下の問いに,具体的に答えることを目指す.1)「アスペクトを見る」と言いうとき,その「アスペクト」には様々なことが包括されうる.図と地の反転や,ウサギからアヒルへというような,概念的に異なるものへの転換だけでなく,どのぐらいの細かさで見るかなど,多様なアスペクトがありうる.実際の相互行為においてどのようなアスペクトがどのようにして参加者自身により捉えられているか.2) 非視覚的なこと(原因,表面の感触など)がアスペクトとして「見られる」ことがある.そのような見方は,実際に相互行為のなかでどう組織されるのか.3) 多様な知覚様式が互いに影響し合うだけでなく,あるいは単に(知覚のあとに)判断のなかで統合されるだけでなく,1つ対象の1つの端的な知覚として成立するための相互行為的メカニズムはあるのか.4) 芸術作品の知覚(単なる花瓶や花が描かれていること以上のなにかを見ること,など)は,相互行為のなかでどう組織されるか.5) 相手の発話や身振り・表情を聞いたり見たりすることが,相互行為のなかで相手の何を知覚することになるのか.これらの一般的な問いを,できるだけ個別化し,具体的な成果につなげていきたい.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染症の影響により,新たなデータ収集がまったくできなく,かつ海外での学会がすべて中止もしくはオンラインになり,旅費相当分が大幅に未執行となった.繰り越し分は,可能となれば補足調査のための費用として用いたい.ワークショップや研究会をオンラインで行なうことで,より多くの論文の発表につなげていきたい.そのなかで,資料や英文校閲のための費用,講師謝金のほか,必要に応じて,データ整理補助のための人件費に,予算を充てる予定である.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Partitioning a population in agreement and disagreement2021

    • 著者名/発表者名
      Nishizaka Aug
    • 雑誌名

      Journal of Pragmatics

      巻: 172 ページ: 225~238

    • DOI

      10.1016/j.pragma.2020.11.015

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Seeing and Knowing in Interaction: Two Distinct Resources for Action Construction2021

    • 著者名/発表者名
      Nishizaka, Aug
    • 雑誌名

      Discourse Studies [採択済]

      巻: 23(6) ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Multi-Sensory Perception during Palpation in Japanese Midwifery Practice2020

    • 著者名/発表者名
      Nishizaka Aug
    • 雑誌名

      Social Interaction. Video-Based Studies of Human Sociality

      巻: 3 ページ: -

    • DOI

      10.7146/si.v3i1.120256

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 哲学対話: 言葉による言葉の吟味としての2020

    • 著者名/発表者名
      山田圭一; 池田喬; 佐藤暁
    • 雑誌名

      フィルカル

      巻: 5(2) ページ: 6-45

  • [雑誌論文] 社会科学の方法論について哲学は何を語りうるのか-ウィンチのウィトゲンシュタインの解釈の検討を通じて-2020

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 雑誌名

      人文公共学研究論集(千葉大学)

      巻: 41 ページ: 131-142

  • [学会発表] Reporting for and about a child: Addressing a child in talk between nursery teachers and parents2021

    • 著者名/発表者名
      Hayano, Kaoru
    • 学会等名
      Center for Language, Interaction and Culture 定例研究発表会
    • 招待講演
  • [学会発表] Revisiting ownership of language2021

    • 著者名/発表者名
      Arano, Yusuke
    • 学会等名
      4th CAN-Asia Symposium on L2 Interaction
    • 国際学会
  • [学会発表] The Ascribability of Action in Interaction: Revisiting the Status/Stance Distinction2020

    • 著者名/発表者名
      Nishizaka, Aug
    • 学会等名
      American Sociological Association
  • [学会発表] 悲しみを見るとはどのようなことか―ウィトゲンシュタインの直接知覚説の検討―2020

    • 著者名/発表者名
      山田圭一
    • 学会等名
      第68回ウィトゲンシュタイン研究会
  • [学会発表] 形式と相互行為機能の適合: 極性質問に対する応答の拡張に着目して2020

    • 著者名/発表者名
      早野薫
    • 学会等名
      日本英語学会第38回大会
  • [学会発表] 相互行為における認識性2020

    • 著者名/発表者名
      早野薫
    • 学会等名
      日本語用論学会第23回大会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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