研究課題/領域番号 |
17KT0134
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西阪 仰 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80208173)
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研究分担者 |
早野 薫 日本女子大学, 文学部, 准教授 (20647143)
山田 圭一 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (30535828)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2023-03-31
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キーワード | 知覚 / 知識 / 会話分析 / エスノメソドロジー / ヴィトゲンシュタイン / アスペクト |
研究実績の概要 |
本年度は,研究期間全体の総括的な成果のまとめを行なった.それは2つの研究群にまとめることができる. 一つは,見え方の多様性に関わっている.西阪は,対象に顔を近づけてあえて細かく見る振舞いを吟味した.細かく見ることは,必ずしも多くの情報を得ることを目指すのではなく,細かさに応じた特定の行為(小さなスペースの文字を書き直す可能性を問うこと,など)の構成要素でありうることを明らかにした.「細かさ」は,いわば対象の多様な見え方の一つともいえる.山田は,書道のレッスン場面を分析することで,生徒が自身の作品を多様に見えるよう(墨の濃淡により成り立つものとして,さらにはその文字を書いたさいの墨の入れ具合の痕跡として,など),生徒を言葉や身振りにより導くことを観察した.山田は,そこから,視覚は基本的に見る者が被るものでありながら,ものの見え方は見ようとする努力により変わりうるという側面を持つという考察を行なった. 第二の研究群は,知覚や知識の複様式性に関わる.山田の上の考察には,作品を視覚的に捉えることのなかに,作品制作過程における運動感覚が入り込み,視覚と運動感覚が一体的に作品の知覚を構成することが示唆されている.これは,西阪の以前の書道の研究で明らかにされた点でもある.また西阪は,自動車での移動中における日本語の場所の近接直示表現(「ここ」など)の使用を分析することで,「ここ」が話し手の現在の位置を指すとき,空間経験は時間経験と一体的になされることを明らかにした.早野は,ある出来事に関する本人の記憶と他者による観察という,異なるタイプの知識が競合し,一つの質問に対して本人が記憶にもとづいて答えた後,他者が他者自身に固有の知識によりその本人の記憶に反論するという行為連鎖を観察した. これらは,本研究課題の総括的な研究成果と言える.研究協力者として鈴木南音・荒野侑甫が加わった.
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