研究課題/領域番号 |
17KT0138
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱田 裕子 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60285541)
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研究分担者 |
北尾 真梨 九州大学, 医学研究院, 助教 (80778811)
藤田 紋佳 九州大学, 医学研究院, 助教 (10437791)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | 子どもの死 / グリーフ / ビリーブメントケア / 家族 / ビジュアルナラティブ / 描画法 / インタビュー / 質的研究 |
研究実績の概要 |
子どもを亡くした家族(遺族)の悲嘆に伴う体験をビジュアルナラティブの手法を用いて明らかにするとともに、遺族の悲嘆を共有する場を作り、その場のもたらす意味を明らかにすることを目的とし研究に着手した。まず、ビジュアルナラティブのグリーフへの具体的調査方法を検討するために、ビジュアルナラティブの第一任者である、やまだようこ教授にコンサルテーションを行い、研究会を開催した。そこで、遺族には「私と子ども」の過去・現在・未来のイメージを描画によって描いてもらう方法を検討し、研究計画書を作成し、倫理委員会に申請した。 予備調査として、子どもを亡くした家族の集い(グリーフの会)を開催し、会の運営や参加観察手法について検討した。グリーフの会には、11家族20人(大人16人、きょうだい等子ども4人)が参加し、参加者の特徴から2グループを作り、それぞれファシリテーターをつけ、自由に語りあう会とした。きょうだい児は別室で遊びのプログラムを実施した。 グループの規模として5~6家族位としたが、それぞれが話すには適当であった。各自が子どもの写真や思い出の物を持参したことで、話のきっかけができ、お互いの共有に有効であった。参加者は亡くしてから数カ月の家族から50年を経た家族までいたが、それぞれの悲嘆は共有され、むしろグループダイナミクスが有効に働いたと考える。各グループでのセッションの後、全体で、それぞれの話題や家族の思いを共有し、ファシリテーターの役割も確認できた。 終了後のアンケートでは、亡くなってからの年数に関わらず、子どもの話をすること、感情表出をして共有できたことが良かった、久しぶりに感情を表出しスッキリしたという評価が大半であった。会の運営には、どんな感情も受け入れられるという、安心感や保証が必須であることが確認された。最後に、研究参加者としての登録を依頼し、10組の家族がその意向を記入された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
7月の交付決定通知から、公務との兼ね合いのなか、ビジュアルナラティブの調査方法について検討を重ねたこと、倫理委員会では、子どもを亡くした家族のグリーフというテーマへの慎重論もあり、ビジュアルナラティブという手法や研究についての理解が得られるまでに時間を要した。それによって、描画等による個別インタビューは年度内では実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
ビジュアルナラティブの研究手法として、参加登録された、家族を対象に個別の描画インタビューを行っていくとともに、随時研究参加者を追加していく。描画インタビューデータについては、やまだようこ教授のアドバイスをもとに、分析を進めていく。並行して、グリーフの会を半年に1度開催して、会の企画、運営を行い、参加者の反応や会自体の分析を行う、会がもたらす意味を質的記述的に分析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実績概要に示したとおり、倫理委員会の承認が得られるまでに時間がかかり、研究実施が遅れたため。次年度以降に、描画インタビューの実施とその分析にともなう謝金、および国内・国際学会やグリーフワークショップ参加などの交通費、分析用のパソコン等機器の購入、論文の英文校正等に使用する計画である。
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