本年度は、昨年度に引き続き、バーチャルリアリティ環境における対人距離の把握ならびに現実空間とバーチャルリアリティ空間の知覚の一致・不一致について検証しながら、バーチャルリアリティ空間におけるオラリティ運用の様式が現実環境におけるオラリティ運用に関する知識を転用している可能性を検討した。 研究1では、バーチャルリラリティ空間における距離の知覚について、周囲を見渡せる条件で検討した。バーチャルリアリティ空間では、現実空間に比べて他者との距離を過小評価するという知見を確認した。さらに、対人距離が快適さに及ぼす影響を検討したところ、二次元ディスプレイに空間を提示した場合に比べて、バーチャルリアリティ空間は現実環境と類似した影響となることが分かった。 研究2では、バーチャルリアリティ環境における時間知覚について検討した。様々な状況のバーチャルリアリティ空間で時間経過の長さを測定したところ、現実環境での時間とほぼ同様の長さとなることが分かった。 研究3では、現実環境でお風呂に入る際の視覚情報をバーチャルリアリティ環境として提示する条件で、空間での過ごし方に関する検討を実施した。その結果、現実環境の触覚と矛盾のない視覚情報をバーチャルリアリティ空間として提示することが空間での過ごし方の快適さにつながる可能性が示された。 上記の実験で得られた知見ならびに前年度までの実験結果を考慮し、バーチャルリアリティ空間におけるオラリティの運用にあたっては、できる限り現実環境に近い状況を構築することが重要であると考えられる。
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