研究課題/領域番号 |
17KT0145
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
出口 善隆 岩手大学, 農学部, 准教授 (40344626)
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研究分担者 |
平田 統一 岩手大学, 農学部, 助教 (20241490)
松原 和衛 (伊藤和衛) 岩手大学, 農学部, 准教授 (70258804)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | 野生動物 / 林内放牧 / センサーネットワーク |
研究実績の概要 |
移動式温度センサーは小型化を行った。岩手大学農学部附属FSC御明神牧場で飼育されている黒毛和種繁殖牛の腟内に改良型移動式温度センサーを挿入し、膣内温度を6分間隔で計測した。計測データはセンサーネットワークを用いて、コンピュータに記録した。また、移動式温度センサー挿入期間中にPGF2αを繁殖牛に投与し発情を誘起した。移動式温度センサー挿入期間中、腟内温度データは6分間隔で安定して得られた。測定された平均腟温は37.37±0.17度、最高温度は37.9度、最低温度は36.92度であった。なおデータ取得率は 99.9%であった。またPGF2αを投与したところ、投与52時間後に体温の上昇が始まり、その1時間後に最高温度の39.15度が測定された。超音波診断法により卵巣の状態を確認したところ、まだ排卵は確認されなかったが、卵胞の状態から当日の午後、あるいは次の日には排卵することが推定された。腟温が上昇した日と、それ以外の日の平均腟温の推移を解析した結果、腟温上昇日は平常時の腟内温度と比べて約0.6度上昇していた。 積雪期前に、林内放牧予定地および転牧時の放牧牛の誘導路への牧柵支柱の設置を行った。積雪が融ける春以降に牧柵を設置する予定である。林内放牧予定地内およびその周辺の林地に自動撮影カメラを12台設置し、常時稼働させた。哺乳類の内、ネズミ類、モグラ類、コウモリ類等の目視での確認が困難な種を除いて、これまでのところ、ニホンジカ、ホンドタヌキ、ホンドギツネ、テン、トウホクノウサギの生息が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、放牧予定地およびその周辺の林地に自動撮影カメラを設置し野生動物相の調査、移動式温度センサー改良型でのデータ取得および発情誘起時の腟温データ取得、移動式GPSセンサーの作成、移動式GPSセンサーの作成を予定した。 「放牧予定地およびその周辺の林地に自動撮影カメラを設置し野生動物相の調査」では、林内放牧予定地内およびその周辺の林地に自動撮影カメラを12台設置し、撮影を開始した。「移動式温度センサー改良型でのデータ取得および発情誘起時の腟温データ取得」では、移動式温度センサーの小型化を行い、腟内温度データを取得率99.9%で取得できた。また発情誘起後、腟内温度の上昇を確認できた。しかし、「移動式GPSセンサーの作成」は平成29年度中に着手したが年度中に完成できず、現在改良中で平成30年度完成予定である。また、平成30年度に予定していた「林地における放牧柵の設置」は、平成29年度中にほぼ完成した。これらのことから、「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、早急に「移動式GPSセンサーの作成および人工草地放牧牛の位置測定」について、移動式GPSセンサーを作成し、人工草地放牧牛に首輪型GPSセンサーを装着し位置データを取得する。次に林内に固定式センサーを設置し「林内用センサーネットワークの構築」を行う。さらに林内放牧牛に首輪型GPSセンサーを装着し、放牧牛の位置データを取得する。「移動式温度センサーによる放牧牛の発情予測」についても、人工草地放牧時から林内放牧時へと段階を経て、発情予測の可能性を検討する。「林内放牧地における野生動物の緩衝帯機能の評価」では、引き続き林内放牧予定地および周辺林地に設置した自動撮影カメラによるデータ取得を行う。その後、林内放牧地内でもデータ取得を行う。撮影された画像から、林内放牧による野生動物の緩衝帯機能の評価を行う。以上のように、計画通り3年間で研究を終了できる予定である。
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