多くの資源を輸入に頼っている日本において、豊富なバイオマスおよびバイオ技術による高機能品生産技術の開発は喫緊の課題である。しかしながら、食糧作物を用いたバイオ燃料や高機能品の生産は食糧危機を招きかねず、食糧問題に直結しない非可食性植物由来の原料を用いることが重要である。本課題では、非可食性植物および農産副生物などの未利用な資源をバイオスティミュラント(バイオ農薬、バイオ肥料)として有効活用することで新たな農資源として開発し、資源循環型農業の構築に貢献する。 バイオスティミュラント(生物刺激剤)とは、植物の活力を高める資材であり、植物のストレス期や生育期に正の効果がある資材である。また、これにより自然の力を生かした環境低負荷型の病害防除法および栽培法を提案し、高収量で、安心安全な農産物を生産することを目的とする。 H31年度(R元年度)は、前年度までに発見した非可食性、かつ、農産副生物の未利用資源であるショウガの茎葉および、ショウガ科植物の月桃の抽出物に加えてタケの利用を考えた。近年、プラスチック製品の普及による竹材需要の減少や安価なタケノコの輸入により竹林が放置され、繁茂竹林による竹害が深刻化している。森林の竹林化を防止するため、タケの有効活用法の開発は喫緊の課題である。本研究の結果、タケの粉からの抽出物に作物の病害(ウイルス病、細菌病、糸状菌病)を抑制する効果があることを発見した。以上により、未利用資源であるショウガの茎葉、非可食性植物の月桃およびタケの抽出物から作物の病害を防除する物質を発見した。それぞれについて有効成分の特定を試みるとともに特許出願を行った。
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