研究課題/領域番号 |
17KT0153
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
伊藤 誠 筑波大学, システム情報系, 教授 (00282343)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | ロボット / 自動化 / 信頼 |
研究実績の概要 |
平成29年度では、研究代表者がこれまで構築してきた信頼感の構造モデルをベースにこれを詳細化した。また、信頼感情勢の初期段階ではFaithが支配的であるとの仮説を立て、その検証に取り組んだ。 能力に関する信頼の分析に当たっては、当初自動車の自動運転システムを対象とした実験を行うことを検討したが、心理学分野において研究再現性の問題が全世界的に注目を集めてきたことが明らかになったことから、本研究の出発点であるMuir & Moray (1996)の実験を再現することに注力することとした。このため、Muir &Moray (1996)の実験システムを利用できないか、Moray教授に尋ねたところすでに手元にないとのことであったため、論文をもとにレプリカの構築を行った。古い論文でもあり、実験システムの設計において詳細が記載されていない部分も多いことから、試行錯誤を繰り返し、ようやく実験装置として使える程度に仕上げることができた。実験方法においても、謝金にボーナス・ペナルティを課すなど、現在では研究倫理上実施できない事項もあり、実験条件の詳細化の調整を慎重に行った。 また、この一連のプロセスにおいて、Muir & Moray (1996)の研究を再現することの意義を再確認する検討作業を、米国Old Dominion大の山仁氏と共同で行った。このことを通じて、faith に影響を与える要因の分析を行い、国・文化の違い、年齢、世代、性別などの影響を無視すべきではないと考えるに至り、国際比較研究をむしろ早い段階で行うべきではないかと考えるに至った。これを受けて、国際比較研究を実現するための準備にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心理学分野において研究再現性の確認の重要性が急激に認識されるようになり、むしろMuir & Moray (1996)の出発点から着実に確認していくことが重要であると考えるようになったため、実験を行う対象を切り替えたことによる(研究課題そのものは変わっていない)。
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今後の研究の推進方策 |
Muir & Moray (1996)の実験は複数の被験者を同時に扱えるため、実験の実施は加速できる。この実験において、Muir & Moray (1996)で得られている知見が再現されるか、あるいは、国、年齢、性別などの要因によって異なる影響がみられるかの検討も併せて行うことによって、従来の研究成果を包含する体系的な知見を得ることにつなげる。
そのうえで、自動車の自動運転における信頼感のモデルと信頼感醸成プロセスの分析に取り組む。一見遠回りのアプローチであるが、トータルで見ればより良い方向に向かうものと確信している。
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