研究課題/領域番号 |
17KT0155
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
梅室 博行 東京工業大学, 工学院, 教授 (80251651)
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研究期間 (年度) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | 感情 / 好意 / 意図 / 信頼 / インタラクション / 自尊心 / 社会的関係 |
研究実績の概要 |
本研究は家庭内などパーソナルな文脈で用いられる情報技術を対象に、トラストの形成および喪失のプロセスを明らかにすることを目的とする。対象とする情報技術は、その仮想的な意図を想定でき、かつユーザとのインタラクションの時間とともに挙動が変化することが期待されるもので、具体的にはヒューマノイドやソフトウェアエージェント、自動運転車などを想定している。 昨年度の成果を踏まえ、本年度は人間が人間に対して信頼を持つ過程に関する先行研究の知見から、人間が情報技術に対する信頼を構築するモデルを仮説として導出することを目指した。このために心理学、特に社会心理学の文献を中心にレビューを行い、人に対する信頼の分類、およびそれらの信頼がどのような手がかりに基づいて得られるのかを整理した。さらに時間軸を導入するために技術経験のモデルに基づいて時間フェーズの概念と組み合わせ、本研究が目的とする情報技術に対する信頼構築の過程の仮説的モデルを提案した。 このモデルの妥当性を検証するために、実際に人間の被験者とヒューマノイドのインタラクションをおこなう実験を実験を行なった。第1の実験では認知的信頼と感情的信頼がそれぞれどのような要因から形成されるのかを明らかにするとと共に、認知的信頼と感情的信頼がそれぞれ異なる時期に構築されることを示した。第2の実験では、数週間にわたって被験者とヒューマノイドのインタラクションを調べ、異なる信頼のカテゴリーがそれぞれ異なる時間的フェーズに発展することを確認して、提案モデルの妥当性を裏付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要な目的である、情報技術に対する人の信頼の構築過程のモデルを提案し、実験を通じて提案モデルの妥当性の検証までを達成した。それらの結果は2つの国際会議で発表することができた。これらを総じて、本年度までは順当に目的を達成していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるため、本研究のもう一つの大きな目的である、どのようなインタラクションがどのような信頼の変化をもたらすのかについての研究に取り組む。本年度までに提案した信頼の過程のモデルに基づいて仮説を導き、それらに基づいたインタラクションを実験的に実装し、ユーザの信頼がどう変化するかについての仮説を検証する。それらを元に本研究が対象とするような情報技術のインタラクション設計のガイドラインとしてまとめることを目指す。 また研究で得られた成果は都度取りまとめて学術論文や国際会議などで発表し、成果を社会に公表すると共に他の研究者からフィードバックを得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の成果を発表した国際会議が2件ともアジアの近隣国(中国・韓国)であったため、国際会議に参加するための旅費が当初の想定水準より多少低く抑えることができた。最終年度はこれを実験のためのシステム構築の費用および研究成果の発表のために用いる予定である。
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