本研究は家庭内などパーソナルな文脈で用いられる情報技術を対象に、トラストの形成および喪失のプロセスを明らかにすることを目的とする。 対象とする情報技術は、その仮想的な意図を想定でき、かつ人間ユーザとのインタラクションの時間とともに挙動が変化することが期待されるもので、具体的にはヒューマノイドや ソフトウェアエージェントなどを想定した。 昨年度までに得られた人間が情報技術に対する信頼を構築するプロセスのモデルについての知見をもとに、今年度はユーザがより信頼を形成するような人間とエージェントのインタラクションのデザインについて検討した。具体的にはエージェントと人間ユーザの対話の文脈におけるエージェントの振る舞いについて、社会心理学の文献調査ををこない人間と人間の対話について得られている知見に基づいて複数の仮説を導いた。そしてそれらの仮説を実際に人間の被験者とヒューマノイドのインタラクションをおこなう実験を通して検証した。 第1の実験では感情の社会的共有に着目し、人間が感情経験を他の人間と共有した際の自身の感情に起こる変化が、人間がエージェントと共有した場合にも同様に起こること、そしてそれらは非言語コミュニケーションの適切な実装により有効性が高まるという仮説を導き、実験により検証した。 第2の実験ではアクティブリスニング(active listening)に着目し、エージェントがアクティブリスニングを行う場合、さらにエージェントが共感的な動作と発話を行う共感的アクティブリスニング(active empathic listening)を行う場合について、それらの無い条件と比較して人間ユーザのトラストの形成がどのように異なるかを検証した。
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