研究課題/領域番号 |
18001002
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
山本 喜久 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (60370102)
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研究分担者 |
根本 香絵 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (80370104)
伊藤 公平 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30276414)
仙場 浩一 NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部・超伝導量子物理研究グループ, グループリーダー (50393773)
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キーワード | 量子コンピュータ / 超高速情報処理 / 微小共振器 / 光物性 / 超伝導材料・素子 / 電子スピン / 磁気共鳴 / Cavity & circuit QED |
研究概要 |
半導体素子グループI(国立情報学研究所・山本)では、今年度は、光パルスによるスピンエコー法を用いてInAs量子ドット中の電子スピン、GaAsバルク結晶中のドナースピンのT_2^*位相緩和過程(主に核スピンゆらぎに起因する)を除去する実験に取り組んだ。π/2-π-π/2パルス列からなるHahnスピンエコー法を用いて、3~6μsecというT_2時間を得た。この値は、π/2-π/2パルス列からなるラムゼー干渉法で測定されたT_2*時間に比べて約1000倍の改善に成功したことに相当する。 理論グループ(国立情報学研究所・根本)では、新しいゲート構成、性能解析、改良で進展があり、ダイナミカルに相互作用するキャビティのモデルによるQスイッチなどへの応用等が示された。非線形結晶を用いた光学非線形性ではこれまでノイズの問題があったが、フィルターを用いることでノイズを抑えることが可能であることを理論的に示した。量子センサーへのアプリケーション、また、量子情報処理全体としての効率を制御系の観点から解析し条件を明確にした。 半導体素子グループII(慶応義塾大学・伊藤)では、シリコン中のリン電子スピンと核スピン量子ビットのコヒーレンス時間を、量子誤り訂正を実行できるレベルまで同位体工学の手法を用いて延ばした。具体的には電子スピンのコヒーレンス600ms以上、核スピンのコヒーレンス2秒以上を達成した。また、シリコン中のリンのアンサンブルを用いた量子ホログラフィックメモリーの初期実験にも成功した。200ガウス以下の低磁場においてSi中のリン(P)の電子スピン共鳴を行い、リンに束縛された核スピンと電子スピンのエンタングルメントを利用しながら、さらに発光を検知する実験にも成功した。 超伝導磁束量子グループ(NTT物性研・仙場)では、巨視的量子状態間のトンネルエネルギーがその場制御可能な量子ビットの作製に成功した。デコヒーレンスに強い最適磁束バイアスでの共鳴エネルギーをナノ秒で制御できるため、量子バス経由の多ビットエンタングルメント生成過程を一気に単純化できる可能性がある。また、超伝導磁束量子ビットを媒介スイッチとして用い、伝送線路共振器中の0/1光子状態と接合中の量子二準位系でのエンタングルメントの生成と時間領域でのコヒーレント制御に成功した。
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