近年、世代間で利害が対立する問題が日本だけでなく世界各国で続出している。とくに公的制度としての年金や医療・介護は所得の世代間再分配を基本線としており、人口高齢化が進んだり人口が減少したりすると、世代間対立がますます先鋭化しかねない。また雇用については高齢者人材の有効活用を求める声がきわめて大きい一方、高い若年失業率や、ニート・フリーターの問題など、雇用機会の世代間分配問題は日本をはじめとする主要国のいずれにおいても緊急性の高い重大な社会問題の1つとなっている。本研究の目的は、 (1)世代間衡平性について従来の考え方を整理し、その一般化を図りつつ、異時点間にわたる資源の有効配分原理を体系的・包括的に考察すること、 (2)年金・医療・雇用の3つの問題に着目し、引退プロセスに関するパネル調査をはじめとする各種の調査を実施しながら、世代間問題の経済的側面を可能なかぎり包括的に明らかにすること、 (3)世代間対立を世代間協調に転換するための具体的方法を提言すること、の3つにある。
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