研究課題/領域番号 |
18002002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
[グン] 剣萍 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20250417)
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研究分担者 |
角五 彰 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (10374224)
古川 英光 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50282827)
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キーワード | 高分子ゲル / ソフト&ウェットマテリアル / 軟・硬複合界面 / 生体材料 / バイオトライポロジー / 高強度 / 細胞外マトリックス / 人工軟骨 |
研究概要 |
本研究は、ソフトでウェットな高分子ゲル材料を開発し、生体材料に応用することを目的とする。平成20年度-21年度は、さまざまな特性を持っゲルを合成し、それらのゲル上における人内皮細胞、軟骨細胞とマウス胚性幹細胞(ES細胞)の培養、増殖、分化を行った。その結果、ゲルの化学構造、表面Zeta電位が細胞の挙動に著しい影響を与えることを初めて明らかにした。具体的には、 内皮細胞に関しては、(1)内皮細胞は-20mVより負のZeta電位を持つゲルの表面で増殖する。(2)内皮細胞の表面糖鎖(glycocalyx)は、培養基盤の化学構造によって異なる。PNaSSゲル上ではPNaAMPSゲル上より表面糖鎖が多く発現している。(3)内皮細胞の表面糖鎖やゲルの弾性率によって、内皮細胞の表面摩擦係数と血小板吸着量が異なる。 人軟骨細胞に関しては、(1)負電荷を持つPNaSSゲル上では、軟骨細胞の増殖が速いが脱分化しやすい。(2)脱分化し、繊維が細胞状になった軟骨細胞はPDMAAm、PVA、PAAm、HEMAなどの中性ゲル、またはわずかに負電荷を帯びているP(DMAAm-co-NaSS)ゲル上では、自発的に軟骨細胞に再分化する現象を見出した。(3)ゲルの弾性率の違い(kPa~MPa)による軟骨細胞の再分化への影響が見られなかった。これまで平板状の細胞足場材上に脱分化しないままで軟骨細胞を効率よく培養することは困難であった。本研究成果によって、電荷を持つゲルと中性ゲルを組み合わせて、脱分化した軟骨細胞を電荷を持つゲル上で大量に増殖させたあと、中性ゲル上で再分化させることでこの問題を克服できる。 マウス胚性幹細胞に関しては、(1)中性ゲル上で培養した細胞は未分化性が高い。(2)負電荷をもつゲル上で培養した細胞が、心筋細胞に分化し易い。(3)ゲルの弾性率の違いによる分化性の違いは少ない。これらのことから、ゲルの化学構造がmESCsの分化・未分化性に最も影響することを初めて解明した。ES細胞は高い増殖能とあらゆる細胞への分化能を持ち合わせた細胞であり、本研究成果は再生医療への応用が期待されている。
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