研究課題/領域番号 |
18002006
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岩田 高広 山形大学, 理学部, 教授 (70211761)
|
研究分担者 |
吉田 浩司 山形大学, 学術情報基盤センター, 准教授 (80241727)
松田 達郎 宮崎大学, 工学部, 准教授 (20253817)
堀川 直顕 中部大学, 工学部, 教授 (70022697)
鈴木 肇 中部大学, 工学部, 准教授 (20260044)
|
キーワード | クォークスピン / グルーオンスピン / 核子スピン構造 / QCD |
研究概要 |
特別推進2006年度(H18年度) 研究実績 原子核は核子から成り立っている。核子は、内部自由度として「スピン」を持つ。しかし、核子スピンが何に由来するのか、まだはっきりしていない。核子は、「クォーク」が結びついた複合粒子であり、このクォークもスピンを持つ。従来、核子スピンの起源は、クォークのスピンと考えられてきた。ところが、クォークスピンの寄与が小さいことが明らかになっている。 QCDによると、クォーク間の力を媒介するゲージ粒子「グルーオン」が存在する。グルーオンもスピンを持っており、核子スピンに貢献できる。本研究では、特に核子のスピンに対するグルーオンスピンの役割を調べる。具体的に、CERNのCOMPASSにおいて、偏極深部非弾性散乱実験を行い、核子スピン構造の詳細を明らかにする。 2006年度は、偏極ターゲット用大口径超伝導電磁石の設置により、大角度に放出されるハドロンに対する検出効率が向上し、格段にデータ量を増やすことができた。特に、グルーオン偏極度のためのオープンチャームイベントの収量が増加した。ところが、加速器等の故障により、半分程度のデータ収集時間を確保するにとどまってしまったが、結果的に最高の統計が得られた。 データ解析では、偏極構造関数g_1に対するQCD解析による間接測定、オープンチャームイベント、2つのハドロンイベントに対する非対称度測定での直接測定からグルーオン偏極度の導出を試みた。その結果、間接測定から解は2つに絞り込まれた。すなわち、グルーオンスピン寄与が正の解と負の解である。正の解は、グルーオンスピン寄与が核子スピンに対して、約60%を与え、負の解は、逆に-60%を与える。直接測定のデータは、正の解に良い一致を示しているが、負の解を排除するまでには至っていない。いずれにしても、グルーオンのスピン寄与は一部のモデルで予想されたような非常に大きな値ではないことがわかった。
|