研究分担者 |
根本 祐一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10303174)
北澤 英明 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームセンター, グループリーダー (00195257)
鈴木 博之 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームセンター, 主幹研究員 (60354370)
金田 寛 新潟大学, 超域研究機構, 教授 (30418131)
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研究概要 |
本研究「電荷揺らぎに由来する強相関量子相の研究」では,電荷揺らぎを観測するのに抜群の威力を発揮する超音波計測を駆使し,(1) Pr化合物の局在4f電子の四極子揺らぎと秩序,(2) カゴ状化合物でのオフセンター振動,(3) シリコン結晶中での原子空孔軌道の研究を進めている。 (1) 希土類Pr化合物における局在4f電子状態の非クラマース2重項の典型物質であるPrMg_3を取り上げ,極低温超音波計測により,弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2のソフト化が消失し,極低温領域まで相転移を示さず"四極子近藤一重項"が実現していることを示唆する結果を得ている。また,Γ_3基底-Γ_4第一励起状態の結晶場をもつPrMg_3, PrInAg_2, PrPb_3に共通な弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2の極小は,Γ_3型の歪みと結合する電気16極子に起因していることを示し,多極子物理の新しい発展を切り開いた。 (2) カゴ状化合物Ce_3Pd_<20>Ge_6および充填スクッテルダイトPrOs_4Sb_<12>の超音波分散と低温ソフト化を発見し,カゴ中の希土類イオンの局所振動がラットリングをしていることを世界に先駆けて明らかにした。これは,伝導電子との相互作用によって局所振動の非調和性が増大していることを実験的に示したものである。PrOs_4Sb_<12>では,オフセンター振動の電荷揺らぎが重い電子とその超伝導の出現に本質的役割を果たしている。 (3) シリコンの原子空孔軌道は電気四極子を持っており,弾性定数が低温でソフト化を起きることを世界で初めて示した。ボロン添加結晶では3個の電子を捕獲した磁性を帯びた電荷状態V^+が実現しており,スピン-軌道相互作用を取り入れた解析を進めた。ボロン添加CZシリコンの超音波計測による原子空孔濃度評価は半導体技術として重要であり,コバレントマテリアル社,東芝セミコンダクターとの産学協同開発が発展している。
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