研究概要 |
本研究では、環境調和型物質変換法の開発に向け、酸素(空気)、過酸化水素、ならびにアジド化合物を利用する新たな不斉官能基導入法の開拓を行っている。特に「反応空間と触媒機能の同調的相乗化」を可能とする新たな触媒の構築を目指して、本年度は以下の研究を実施した。 1.触媒と反応生成物の複合体形成を利用した触媒の多機能化 既知のサレンルテニウム触媒を用いて検討を行い、1,3-ジオールの酸化生成物が触媒と複合体を形成し、d1-アルコールの速度論的分割の優れた触媒となることを見出した。 2.光無照射、補助剤無添加条件下室温で進行する不斉酸素酸化反応の検討 この目的のためにサレン錯体におけるアピカル配位子効果の検討に着手したが、その途中でアリール配位子をもつサレンイリジウム錯体がシスー選択的シクロプロパン化の優れた触媒であることが明らかとなった。現在基質適用範囲について検討中である。 3.過酸化水素の二重活性化による不斉エポキシ化の開発 ジ-μ-オキソチタン(サラン)錯体を触媒に用いて、目的とした過酸化水素水を用いる不斉エポキシ化の最適化をほぼ達成することができた。この成果は、Angew.Chem,Int.Ed.に本年のhighlights(2006,45,6250-6252)として掲載された。さらに、A1(サラレン)錯体を開発して、過酸化水素を用いる不斉スルポ酸化も達成した。 4.高耐久性触媒の構築と不斉窒素官能基化の開発 高耐久性ルテニウム(サレン)触媒を開発して、脱離容易な保護基をもつアジド化合物を用いる高選択的不斉アジリジン化を初めて達成した。 5.単一分子中に光増感サイトと水素生成触媒サイトを兼ね備えた光水素発生デバイスの構造を制御することにより、水素生成触媒作用に及ぼす白金イオン回りの電子的効果ならびに立体効果を明らかにした。光水素生成デバイスで両機能が効果的に働く重要な支配因子の解明にも成功した。その成果は、Dalton Transactionに掲載されると同時に、3月の最多アクセス論文のトップ10入りを果たした。
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