研究課題
1. 脳と行動の雄化に関わるfru遺伝子ネットワークの解明培養S2細胞を用いたクロマチン免疫沈降実験から、Fru結合部位を含む可能性の高い43の配列を抽出し、結合標的モティーフを推定することが出来た。これによりFru標的遣伝子同定に一段と近付いた。一方、Fruと共同して働く因子の探索とその機能解明では、性的二型を示すfru発現介在ニューロン、mALのMARCMクローンを作成し、その形態に対する作用を指標とした解析を進めた。fru座の機能低下型変異体雄においては、mALニューロンのprojectionが部分的に雌化するが、ヒストンデアセチラーゼ1遣伝子(RPd3)の機能をRNAiによって低下させることによって、fru変異による雌化が増強されることが明らかになった。この結果から、Fruがクロマチン制御を介してニューロンの性分化に関与することが示唆され、Fruタンパク質の作用機構の解明に道筋が付けられた。2. 性行動を支配するニューロン群の同定接触化学フェロモン受容体Gr68aと配列上類似したGr32aに着目して実験を行った。Gr32α遺伝子のノックアウト、Gr32a発現感覚ニューロンの機能抑制、Gr32a発現感覚ニューロンを取り囲む支持細胞に特異的発現を示すフェロモン運搬体様タンパク質遣伝子Obp57dのノックアウト、Gr32a発現感覚ニューロンを含む前肢ふ節切除、これらのいずれの操作も、雄の性行動パターンに異常を引き起こした。求愛時に雄は通常、片翅だけを広げるが、これらの操作を受けた雄は両翅を広げる。さらにGr32a発現感覚ニューロンの軸索末端は雄においてのみmAL介在ニューロンの樹状突起と食道下神経節で接触し、mAL介在ニューロンにMARCMクローンをつくってその機能を停止させると、雄が求愛時に両翅を開いて求愛する傾向が有意に高まった。これらの結果は、mAL介在ニューロンがGr32a感覚ニューロンからフェロモン入力を受け、求愛時の翅の使用を制御する機能を果たしていることを示唆する。こうして、従来全くわかっていなかった雄の性行動制御回路の一端が明らかになった。
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