研究課題/領域番号 |
18002016
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡村 均 京都大学, 薬学研究科, 教授 (60158813)
|
研究分担者 |
土居 雅夫 京都大学, 薬学研究科, 講師 (20432578)
山口 賀章 京都大学, 薬学研究科, 助教 (30467427)
|
キーワード | 時計遺伝子 / 発現制御 / 発光 / 高血圧 / 皮膚 |
研究概要 |
生体リズムを分子レベルで解析し、マウスにおいて、生体時計の中枢である視交叉上核の神経細胞における時計遺伝子の振動原理と、末梢臓器の細胞の振動原理が非常に似ていることを、数理解析にして明らかにした。ヒトにおいては、皮膚細胞からの活性酸素からの微弱フォトンと思われる発光が生体リズムを示すことを報告した。これらの正常の生理条件下における24時間リズムに加えて、病的条件下で、時計遺伝子がどのような働きをするのかを検索した。そのため、我々は時計遺伝子であるCry1とCry2を失った遺伝子改変マウス(以降Cry-nullマウスと呼ぶ)を用いてリズム異常に関連する病態を検索した。その結果、Cry-nullマウスは副腎球状層からの過剰なアルドステロン分泌によって食塩感受性の高血圧を示すことを見出した。DNAマイクロアレイ解析ならびにレーザーマイクロダイセクション法を用いて副腎機能障害の原因分子を探ったところ、副腎の球状層に特異的に発現する新しいタイプの3・水酸化ステロイド脱水素酵素(3・-HSD)がCry-nullマウスにおけるアルドステロンの異常産生に関与することが分かった。興味深いことに、この新3・-HSD遺伝子は正常のマウスにおいては時計の制御を受けて概日性の発現変動を示すが、時計機能を完全に失ったCry-nullマウスでは一日を通して常に高いレベルで発現が維持され、その結果として惹起される3・-HSDの活性の上昇が球状層におけるステロイドの合成を増大させていた。以上の結果は、時計遺伝子であるCryが副腎球状層特異的3・-HSDの発現制御を介して正常なアルドステロン産生の維持に寄与していることを示しており、このパスウェイの異常がリズム失調に伴う食塩感受性高血圧の発症機序において極めて重大なリスク要因となっている可能性を示唆している。
|