研究の概要 : 24時間活動する人工的な社会になった現在、食事、睡眠などの生活リズムは崩壊の危機に瀕しており、これに起因するさまざまな社会問題や、生活習慣病等の健康問題が緊急の解決すべき課題になりつつある。今回我々は、ヒトや動物モデルを用いて、体内リズムを生み出す機構を分子レベルで解明し、リズム異常に起因する病態に迫る。 研究の目的 : 10年前時計遺伝子が発見されて以来、生体時計の基本的仕組み(分子時計)は解明が進んだが、それが生理的な生体リズムにまで至る過程は未だ不明のままである。この分子レベルの解明なくしては、具体的な疾病に至る過程を説明できないと考え、今回我々は、分子時計のシグナルが、細胞内シグナル伝達から個体レベルまでどのように伝達・統合されていくのか、その全貌を解明する。特に注目するのは、体全体の時計を統括する視床下部視交叉上核(suprachiasmatic nucleus : SCN)とその時間情報をホルモンシグナルに変換する副腎である。究極的には、種々の生活習慣病と生体リズムの関係を分子レベルで解明することも視野に入れる。 研究の方法 : 以下が具体的な研究項目である。(1)哺乳類の分子時計の中心的な振動子PER2の作用機構の解明、(2)細胞外から細胞内の分子時計への細胞内シグナル伝達機構の解明、(3)リズム産生(時計)に特化した神経核であるSCNの細胞時計、細胞間同調機構の分子レベルでの同定、(4)SCNからの時間シグナル出力、および時間シグナルをホルモンシグナルに転換する副腎での分子機構の解明、(5)末梢時計と生理機能・疾病との関連の追及。
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