研究課題
本研究では、これまでの知見をもとに、独自に開発した分子シャペロン機能を有する疎水化多糖による自己組織化ナノゲルを用いて、癌治療における新しいDDSの設計とその応用1を目的とする。1)カチオン性ナノゲル-CpG DNA複合体による免疫活性化:CpG DNAを用いた免疫活性化をアレルギーや癌治療に利用する研究が盛んに行われている。しかしながら、CpG DNAは生体内で非常に不安定であり、細胞内への取り込み効率も低いため、細胞内へ安定に効率よく輸送するデリバリーシステムの開発が望まれている。本研究ではカチオン性ナノゲルによるCpG DNAデリバリーシステムの開発を目的とし、免疫細胞への導入と活性化について研究を行っている。本年は、カチオン性ナノゲルとしてコレステロール置換CHPにアミノ基を導入したCHPNH_2およびスペルミン基を導入したCHPspeを用い、電気泳動によるCpG DNAとの複合体形成の検討、J774.A1細胞(マウスマクロファージ様細胞)との相互作用による機能評価を行った。CHPspeナノゲルは、CpG DNAと効率よく複合体を形成し、J774.A1細胞と相互作用させると、IL-12産生が顕著に増大したことから、キャリアとして有用であることが明らかになった。2)IL12-ナノゲル複合体を用いた免疫療法:インターロイキン12(IL-12)は、高い抗腫瘍効果を持つサイトカインの一つとして注目されている。しかしながら、サイトカインを用いた免疫療法においては、その短い半減期に示される生体内での不安定性や、大量・反復投与による副作用などが、有効な抗腫瘍効果を得るための障壁となっている。IL-12の徐放性キャリアとしてのCHPナノゲルの機能を検討してきた。CHPナノゲル-IL-12複合体の皮下投与により、皮下腫瘍モデルマウスにおいて腫瘍の有意な増殖抑制が得られることを明らかにした。さらに、タンパク質徐放性を高めるために、新たにナノゲル集積ナノ微粒子(100-200nm)を開発し、IL12の長期徐放に成功した。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (5件) 図書 (2件)
J. Bioact. Compat. Polym. 21
ページ: 487-501
FEBS Lett. 580
ページ: 6587-6595
Clin Cancer Res. 12
ページ: 7397-7405
日本臨牀 64
ページ: 215-220
現代化学 428
ページ: 30-35