人工的に調製したランダム配列のRNA集団の中から生体分子に特異的に結合できるRNA分子を選択増幅し、得ることができ、この分子を丁度抗体のように利用できる。この分子をRNAアプタマーという。これまでアプタマーの取得のためには、標的を精製する必要があったが、本研究では、プロテオーム解析に使う全タンパク質を標的とし、一度に多数のアプタマーを創製する方法の開発を試みている。これを網羅的アプタマー創製法と呼ぶ。本研究では、前立腺がん細胞から抽出される全タンパク質を標的としたRNAアプタマーの集団を創製し、二次元電気泳動で展開したタンパクに対して二次的選択を行うことでがん関連因子に対するRNAアプタマーの単離を一度にかつ網羅的に行い、これらの中から診断薬や治療薬などの開発に繋がる基盤システムの確立を目指している。前立腺がん細胞からの全タンパク質を標的にアプタマー選択ラウンドを回した時、どんなRNAにも結合してしまう非特異的RNA結合タンパク質の存在が、網羅的アプタマー創製法の確立の上で問題となっていたが、本年度の研究から、結合反応の際、酵母のRNAを比較的大量に加えておくことによってこの問題がある程度解決できることがわかった。さらに10ラウンドほどの選択を行ったアプタマーを放射能ラベルして、電気泳動で展開した全タンパク質をプロットしたフィルターにノースウェスタンの手法で結合させる二次選択方法の開発を検討した。この方法で結合したRNAを回収できる見込みがついた。さらに、将来的に得られたアプタマーの安定性を上げるために、モデルアプタマーを用いて、安定化に関する新しいアイディアも検討している。
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